活動レポート
2019年12月17日アート助成
Vol.07 のせでんアートライン2019(のせでんアートライン妙見の森実行委員会)の活動紹介
■のせでんアートラインについて兵庫・大阪をまたぐ能勢電鉄沿線地域と、その周辺地域を舞台に2013年から2年に一度開催している芸術祭。アート表現を通じて地域の魅力を広く伝え、新たな価値を生み、参加者間の交流により新たなつながりが生まれることを目的としています。
Website:http://noseden-artline.com
■地域を読み解くところからスタート
第4回目となる今回の作品は豊能町を中心に設置されており、作品が多く設置されている妙見山の麓、妙見口まで向かいました。大阪駅から1時間強ほど、途中、住宅地と里山が入り組んだように広がる沿線を過ぎると、能勢電鉄妙見線の終点 妙見口駅に到着します。
今回のアートプロジェクトは、企画や作品制作を行うにあたり、京都精華大学 山田創平先生に依頼し、対象地域に関する文献で読み解くところからスタートしたそうです。「すべてが1からのスタートだった。」と前田文化氏(アートプロデューサー)。この地域は海洋文化と強いつながりがあるそうで、妙見山は北極星信仰や山岳信仰が残る地域として知られていただけに、海の文化とつながりがあるという話は新鮮なものでした。8組のアーティストも、それぞれの地域の文化や歴史、課題と向き合いながら作品を制作している印象でした。
台湾の阿美族の伝説と、妙見山の北極星信仰を重ねなぞって作られた作品。
会期末に植樹祭を行い、作品と土地をつなぐ。
「面向北方的方向,是回家的地方(北方へ向かえば、そこは家に帰る場所)」
(拉黒子・達立夫(ラヘズ・タリフ))
■沿線地域への広がり
作品を作る過程においても、アーティストが地元の小・中・高校生や一般の方を対象にワークショップを実施し作品作りに関わってもらったり、地域住民の方が地域サポーターとしてアートスペースの運営に関わっていたりと、「のせでんアートライン」は沿線地域への広がりをみせ、活動していました。
深澤孝史氏の空き家を活用した「光風台マイホームシアター」には、地域サポーターの方が集まるコミュニティの場になっていたことが印象的でした。「光風台マイホームシアター」を地域で受け継ぎたいという声もあるそうで、アーティストが地域に入り込み、地域とよい関係性を築いているようでした。
地域プロジェクトでは各地域の魅力を発見するためのイベントが実施され、地域ブランディングチームにより沿線地域の飲食店や宿泊情報などが発信されていました。
妙見山の山道の木々に設置された地元の小・中・高校生らと共に制作したサバイバルネット
作品への道しるべのように山道沿いに設置されている
「星見るひとたちと出会う旅」(渡部睦子)
■今後の展望
のせでん沿線は、妙見山を中心に古くから北極星信仰の聖地として参拝者を集め、1960 年代以降は鉄道沿線に広がったニュータウンから都市への通勤の足としての役割を果たしていました。近年では妙見山を中心とした地域の形が見えづらくなり、地域コミュニティの希薄化、少子高齢化、大規模な自然災害といった社会問題に向き合うことになりました。その中で、今後100年を見据えた持続可能なまちづくりについて地域と共に考えることを実施してきた「のせでんアートライン」。アーティストによって可視化された地域の文化や歴史、課題を読み解いた作品は、地域の人々や訪れた人々に改めてこの地域と向き合い考える時間を与えたのではないでしょうか。今回の「のせでんアートライン」の実績がどのように地域に引き継がれていくのか、今後の活動にも注目していきたいと思います。
街の中にある小さな欠損を修復するプロジェクト、「D」の文字を修復したもの
作品と同タイトルの連載は、Websiteのほか、まちの掲示板でも広く周知
「なべたんの極力直そう around のせでん」(渡邉朋也 a.k.a. なべたん)