瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

越水大師堂の湧水の調査と湧水販売事業化への試み

豊島食プロジェクト推進協議会 濵中幸三

活動の目的

豊島の唐櫃岡地区は、檀山の中腹に位置し、空海によって掘られたと言い伝えられている清水を中心とする湧水を基盤として、集落が成り立っている。また2010年に完成した唐櫃地区の豊島美術館もこの湧水が根底に流れていると思われる。
平成22年に豊島中学校が総合的な学習(てしま学習)の中で、清水の湧水が涸れないことを地質学的に明らかにした。この調査結果を基として、てしま学習の中で、過去の湧水の利用、現在の湧水の利用等を調査し、人間と水のかかわりについて学習し、その成果を豊島へ還元したい。
また弘法大師伝説の「越水大師堂」の井戸水(小さな湧水)がミネラルウォーター類の原水の基準、水道水の水質基準等に適合するか否かの調査を行い、飲み水に適合するものであれば、豊島ブランドのナチュラルミネラルウォーターとして、販売の可能性についても調査研究したい。
期待される成果は、中学生が水の大切さ、豊島の水の文化を学ぶことができると同時に、豊島ブランドの開発やその事業化についても関心を持ち学習することができること。さらにそれを発表することによって、島の住民も豊島の湧水について理解を深めることができ、島の振興の機運も盛り上がる。事業化が成功すれば、中学校にはロイヤリティーの収入も考えられる。

活動の経過

1. 中学生による清水(湧水)の調査
ナチュラルミネラルウォーターとして販売可能か:
土庄保健所衛生課藤明氏の法律等の基準の説明
2. 清水及び越水大師堂の水質調査委託
水道水の水質基準50 項目
3. 豊島の簡易水道の原水及び処理水の水質調査
土庄町から資料を入手
4. 販売可能性の検討
販売するとなれば、水中の生物、アルミニウム及びその化合物、鉄及びその化合物、色度、濁度等が水道水の水質基準を満たさないので、本格的な水処理が必要となる。

活動の成果

平成22年の地質調査で、唐櫃の清水の湧水が涸れずに湧出し続ける理由が、雨水が固い花崗岩層の上にある黒豊島石・白豊島石(軟らかく水を含みやすい堆積岩)の中に蓄えられ、花崗岩層の表面を流れ、清水のあたりで湧出していることにあると明らかになった。
今回、清水の水質などの調査を行い、次のことが分かった。
1. 湧水の水温が夏場でも13℃から14℃ぐらいで安定している。冬は暖かく、夏は冷たい。(昔は洗濯やスイカを冷やす等冷蔵庫代わりに使われていた)
2. 降雨の後は水量が5倍ぐらいに増加する。降雨後の水量2.64リットル/ 秒 日量約228トン(表層水に近い)
3. 水中に珪藻及びその胞子等を含んでいる可能性が高い。
4. 詳しい水質調査により、販売には水道水並みの水処理が必要であるが、自分で飲用するには、煮沸などを行えば飲用できる。
また、副次的な成果として、中学生が清水の調査を自ら行うことによって、清水への愛着が深まり、さらに地域の方を対象とする豊翔会での発表により、地域の方も清水のことをより知ることになった。

活動の課題

今回の活動により、ナチュラルミネラルウォーターとしての商品化は、簡単にできないことが分かった。
しかし、唐櫃の簡易水道の原水と清水の水質はよく似ており、簡易水道の水を直接ペットボトルに入れて販売する可能性、また、豊島の「いちご」、「レモン」、「オリーブ」等を使ったジュースを試作することも考えられる。