瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

高松市六条町に現存する「高原水車(たかはらすいしゃ)」の保存活動

高原水車友の会 平田恵美

活動の目的

江戸時代末期に作られた讃岐の水車が、高松市六条町に現存している。旧古川の高低差を利用した導水路の長い水車である。水車小屋の中にある直径約5メートルの木製水車はかつて精米・製粉の動力を担っていた。最近の調査で讃岐の水車大工の高度な技術が集積していることがわかってきた。当会は、この水車の動態保存をめざし、その技術と文化を学び、広めることを目的とする。

活動の経過

「高原水車」は現在稼働していない。しかし、かつての場所にそのまま残され、さらに古い道具類や明治期以来の関係古文書も多数残されている。この水車をもう一度復活させ、その文化的価値を学ぶために2014年4月に有志のものが「高原水車友の会」を結成した。発会式には、20年前から当水車研究に関わっている研究者や水車大工の話を聞き、さらに地元の地理学者を招いて、讃岐平野の自然と水車の立地について講座を開いた。また夏休みには瀬戸内海歴史民俗資料館と共催で「親子水車体験学習会」を開催し、子どもたちの興味を呼び起こした。さらに友の会メンバーの技術力を生かし、水車の前後約60メートルの由良石づくりの石垣水路の浚渫を行い、下流の旧古川の水路開削を実現した。また古い機械製麺機のオーバーホールを試み、うどん作りも進んでいる。他県の水車見学も楽しんだ。友の会は、作業別に企画委員会を作り、毎月月末に水車場を公開している。

活動の成果

高度な技術を要する伝統水車の復元により、昔のオートメーションが動き出す日を心待ちにしながら、「友の会」メンバー(現在会員約100名)は、自分たちにできることをやってきた。この1年間の活動によってメンバーが親睦を深め、元気に過ごしてきたことが大きな成果である。活動の様子は、4回の水車通信で全会員に伝えた。
水車の復元には専門の水車大工の存在が不可欠だが、友の会の活動や熱意が伝わり、多忙な中、九州から何回も調査に来られている。最近では古い水輪の調査から図面を起こす作業に取りかかっている。その中で、昭和42年に最後の修理をした香川県坂出の水車大工の技術の高さに言及されることが多い。我々もその意味を理解したいと思っている。今は高原水車の文化的価値について解明の途上にある。
水車の下を通る石垣水路の浚渫は、中に人が入るのは危険なので、「煙突掃除方式」を思いついた。長さ約2メートルの丸太に突起物を打ちつけ、溜まった泥を掻き出すためにロープを引いて水路の中を往き来させた。楽しい作業であった。
また、古びた製麺機は動いてはいたが、木製土台も朽ち、金属のローラーやギアーも古い油にまみれていた。知識と技術を持つ会員が、慎重に分解し、組み立て、元に戻した。一般会員も楽しく作業に参加した。
ゆっくりだが、このような人材に恵まれたグループでリタイア組の元気な60代が活躍している。
現在、現実的な問題として考えているのは、この水車場の保存とともに将来の活用の仕方である。月末の企画委員会で様々なアイデアが出ている。
またこの間、新聞や諸報告書に「高原水車」が取り上げられたことは、活動の成果と言える。掲載図書は、最近では『讃岐うどん』第31号、『産業考古学』第152号などである。

活動の課題

伝統的水車の復元には正確な調査が必要である。第一に、木製の水輪と歯車、石臼、臼でひかれた小麦粉の搬送システム、ガンド(篩)の調査をすること。第二に、新しい機械装置を導入して精米製粉などをしていた工場部分の調査。第三に、江戸時代から建っている古い建物の調査である。専門家と共に、「友の会」が協力しながら学ぶことは多い。今後、水車場周辺の整備に取りかかり、将来の活用を考えることは大きな課題である。