瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

「豊島リビング・ヘリテイジ・プロジェクト」

豊島リビングヘリテイジ推進会議「てしま大学」 高橋直治、川部良太

活動の目的

サスティナブル・アイランド(持続可能な自然循環型生活が可能な島)としての豊島を十全に感じ、そこで生活する人を見つめ、この島の「豊かな」生態系と、「豊かな」暮らしを保全していくことを究極目的にした「豊島リビング・ヘリテイジ・サポーター」育成のための機会となる短期集中型ワークショップ・ツアーを開催する。

活動の経過

ツアー企画としては、豊島に生きる「人」を具体的に見つめ・感じ、自給自足可能な島の環境・これまでの歴史・現在の生活のあり様を仔細に省みることを通し、豊島住民有志と島内外の有志参加者とが、共に「本当に豊かな暮らしとは何か」を考え、見つけ、育て、創造していく“ 学びの場(それがサポーター育成の場ともなる)”を構想。その2泊3日の体験型プログラムを「生活造形会議」と名付け、2014年度に3回開催した。
◆2014.8.22-24 vol.1[寄り合うこと]
檀山から海まで水をたどるグリーンツアー、住民自治とサスティナブルを考える産廃事件現場見学、農民福音学校に学ぶ農と生活の技術研究家探訪など。
◆2015.2.13-15 vol.2[豊島から考える]
Iターンの移住者であるオリーブ農園で働く佐々木貴宏氏の活動に密着。農園見学、豊島読書会、甲生地区の棚田休耕田へのオリーブの植え付け作業体験など。
◆2015.2.24-26 vol.3[ソーシャルアクト]
檀山開拓団の子孫であり元香川県議の石井亨氏の活動に密着。檀山開拓の話、高齢のため島を出た住民の田畑への猪被害対策として鉄柵設置作業などを体験。
(1回ごとに内容を更新しながら、企画前に島民有志の方々との入念な打ち合わせによって企画内容を練り上げた。)

活動の成果

8月に開催した豊島リビング・ヘリテイジ・プロジェクト「生活造形会議vol.1」に応募参加した大阪在住の30代女性が、その直後に豊島に移住を決め、住民票を移し、豊島住民となったことは、今回の活動の最大の成果だった。豊島の豊かな自然と暮らしの中に自身の人生の再出発を試みようとする彼女の決断には、我々活動主催者だけでなく、豊島の住民にも新たな、またこれからの移住を考える人にも大きな勇気と希望を与えたことと思われる。また、地産地消を目指す彼女の豊島での食生活の一端をシェアさせてもらうなど、その後の「生活造形会議」の活動にも積極的に協力していただいている。
2015年2月のvol.2の回では、横浜から数年前に甲生地区に移住した佐々木氏の、無農薬でオリーブを育てたいという活動のお手伝いをさせていただいた。実際に、かつて棚田だった休耕田に、10本のオリーブの苗木を植え付ける作業を完遂できたことは、休耕田の新たな活用の可能性にも繋がり、またその土地に移り住んだ氏のこれからの生活をより豊かに展開させていく一助になったのではないかと考える。
vol.3の回では、高齢のために島を出た家浦地区の長老の田畑に、猪対策の鉄柵を約100メートルに渡って設置した。その活動は、現在瀬戸内海地域で急速に増えつつある猪への実対策の一端を担うことになったと考える。またそれは同時に、本プロジェクトにとって、高齢化していく豊島における住民互助の意識の未来像とその課題を考える契機にもなった。
そしてなにより、3回の「生活造形会議シリーズ」を企画開催する中で、参加・協力いただいた豊島住民をはじめとする協力者の方々と、強力な信頼関係を構築できたことこそが、次世代の、豊島リビング・ヘリテイジ・サポーターの育成にとっての、大きな資産になった。

活動の課題

相変わらず豊島の人口は減り続けている。豊島での自給自足に近い生活を守ってきた者たちもどんどん鬼籍に入っていく中で、島外から、理念だけで豊島の豊かな環境を守れと訴えるだけではどうにも歯が立たないことを痛感した。新しく島に移住してきた人たちや持続可能なトータルな暮らし方を島内外で目指している方々と、より実地に連携しながら、いかにすれば豊島の保全が可能か、今後も息の長い活動を続けていく必要を感じている。