瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

牛窓地区観光と多次元産業化を図る農業・漁業が連携する地域再生(平成26年度)

aiue絆協議会 中村和美

活動の目的

朝鮮通信使ゆかりの歴史的文化的遺産を有する牛窓は、また日本のエーゲ海と呼ばれ風光明媚な自然環境に恵まれた観光リゾート地としてバブル期まで賑わった地域である。その後、全国の観光地と同様に構造的不況により衰退が進み、今は過疎地域に指定されている。本活動は、観光と農業・漁業が連携し多次元産業化により新たな事業創出を目指しながら、地域固有の自然、歴史文化、民芸、芸術など優れた地域資源を観光に活かす地域再生を目指している。

活動の経過

本活動は、平成23、24年度農水省の交付金、平成25、26年度福武財団及び瀬戸内市の助成金等を受け、「観光と多次元産業化を図る農業・漁業が連携する地域再生」をテーマに、継続して岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓地区の市民有志で取り組んでいる。
平成23年度は、事業の立ち上げに必要な人材育成、研修、体験イベント等に重点を置き、平成24年度は、具体のプロジェクト立ち上げに向け、地域資源の再発見や、農業が盛んな地区における農産物産直市定期開催のための実証実験などに取り組んだ。平成25年度は、実践段階へ向けてさらに一歩進めた取り組みを行った。農業は、永田農法に習熟するため、永田照喜治氏の指導を得てトマトなどを試験栽培した。また、地域産食材による試作・試食会、産直市なども地元主体で行い、農業の多次元産業化へ向けての試みを進めた。
本年度は、これまでの活動を踏まえ、さらに活動の範囲を広げ牛窓地区の地域再生を目指し、当活動団体以外の協力者と連携の下、瀬戸内海沿岸や島嶼を船で結ぶ海遊プロジェクト、古民家とアートを融合させたプロジェクト、地域資源に最も恵まれた前島の再生プロジェクト構想計画など多様で固有の資源を活かしたプロジェクトを立ち上げ、取り組んでいる。

活動の成果

牛窓地区の観光と農業・漁業が連携する地域再生を目指した活動は、観光と農業・漁業の他、地域の優れた資源である歴史文化、芸術、海と自然環境などを活かし、それぞれの資源を相互に連携させて効果的な活動とする取り組みに、関係する事業者等の協力を得た新たな取り組みも加え、以下の主要プロジェクトの展開を図った。
(1)もったいない農作物プロジェクト
岡山特産農作物である清水白桃の加工食品化を行った。収穫果のなかで、着色不良や裂果、型の不揃いなどが避けられず、品質が同等でも規格外商品として市場に流通することなく廃棄される桃を生産農家から譲り受け、桃ジャムの加工を行った。その他、試験栽培したトマトの加工食品化も行った。その試作品は美味しく、極めて高い評価を得て、一部をホテルに納めた。また、商品化されることが少なくなり、今は捨てられる小魚グチは、天日干しをして美味しい干し魚の試作加工を行った。
(2)古民家アートプロジェクト
瀬戸の唐琴を借景として小高い丘の上に建つ妙福寺別邸宝珠庵は、古民家保存の上で貴重な建物である。スペイン在住のアーティスト山口敏郎氏が、ここを舞台に現代アートを展示した。古民家と現代アートが融合する幻想的空間を醸し出した。
(3)瀬戸内海遊交流プロジェクト
瀬戸内海の風景を単に見るだけの通過型観光から脱却するため、船を活用することにより、海を楽しみながら海洋環境の大切さを学び、沿岸地域や島嶼を結ぶ。また、当プロジェクトと宿泊・観光、飲食施設等との連携による滞在型観光地への転換を目指す取り組みを始めた。
(4)落書きお絵かきプロジェクト
子どもたちからお年寄りまで、何でも自由に書いて楽しむ。落書きを通して心を解放し、コミュニケーションを図る在住画家のプロジェクト。
(5)牛窓マイスター育成プロジェクト
伝承される生活文化や新しい地域文化の技術を持つ人たちを、牛窓マイスターとして本活動で認定し、次世代へその技術や文化を継承するプロジェクト。

活動の課題

地域再生に取り組む担い手不足と住民の現状への危機意識の不足、まちづくりのポリシーが明確でなく、市民活動が相互の連携なく行われていることなどにより、地域活性化・再生への取り組みの効果が現れず、このままでは限界集落からさらに厳しい段階へ移行することは避けられない状況である。我々の地域再生の取り組みにおいても、活動する担い手が高齢化し、不足している現状が最大の課題である。まさにまちづくりは人づくりであることが実感される。