瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

One Ushimado 地域再生プロジェクト

aiue絆協議会 中村和美

活動の目的

朝鮮通信使ゆかりの歴史文化資産を有するかつての港町牛窓は、自然環境にも恵まれた観光リゾート地として一時期賑わった地域である。今はその面影はなく、超高齢・人口減少が進み過疎地域に指定されている。本活動は、このように衰退が進む地域の現状に対し、個々繋がりがなく取り組まれている住民や地域での活動を、連携・協働する活動体制One Ushimadoを組成し、地域が一つになって取り組む地域再生を目指している。

活動の経過

本活動は、岡山県瀬戸内市牛窓町の過疎高齢化が著しい地域の現状に危機感を抱き、住民活動の経験がない有志が集まり、平成23年に活動母体となるaiue絆協議会を立ち上げ、地域が元気になるようにと、地域の居場所づくりから活動が始まった。平成23、24年度に農水省の交付金を受けて、「観光と農業・漁業が連携する地域再生」をテーマに活動し、引き続き25、26年度は、福武財団および地元市の助成事業として、活動範囲を近隣から地域レベルへと広げていった。平成27年度は、「OneUshimado地域再生計画」をテーマに、地域で個々に活動する主体が連携し一つになって地域再生に取り組むことを目指した。高齢者が中心となる活動主体であるため、活動内容も限られてきたが、これまでの取り組みは、郷土食再発見、農水産物多次元化試作、農産物産直市、民芸文化活動、牛窓マイスター、古民家アート、海遊交流倶楽部など、活動範囲・内容を徐々に広げ深めて取り組んだ。本年度は、さらに活動範囲を瀬戸内沿岸地帯・島嶼部へと展開させた海遊交流プロジェクトでは、牛窓港を母港とした観光旅客船で、沿岸地域や島々をつなぎ、地域の連帯と活性化を目指した活動に取り組んでいる。

活動の成果

これまでに取り組んできた活動は、住民の生活や地域活動の中に定着してきている部分も見られるが、地域の人口減少・高齢化は一向に止まらない。この現状を打開するため、恵まれた地域資源を有効に活かし、地域の付加価値・魅力を高め、地域の自立と若者移住を目指すための方策に、地域の立場から取り組んだ。
1.地域の自立を目指す地域整備構想の策定・提議
現在、瀬戸内市は都市計画未指定であることから、市の将来像を示す具体的な整備指針がない。そのため、地域整備ビジョン「瀬戸内サンリゾート自立定住圏構想」を策定し、住民活動団体、市議会関係者、首長等に対し、地方創生に結び付く構想案として提議した。市の将来像・整備指針策定が、今パラダイムシフトの時代に強く求められている状況であり、この提議を基に、市民、議会、市内部等で議論が深化することを期待する。
2.One Ushimadoに向けての取り組み
同じ沿岸地帯・島嶼部ゾーンに位置する前島、裳掛地区の住民活動団体は、同様の交付金を受けながら、個々別々に地域活動に取り組んでいる。同一ゾーンに位置する両地区の住民活動団体、関係者等に対し前記1の構想を提議した。今後、両地区および牛窓地区が相互に連携し沿岸地帯・島嶼部ゾーンの再生に相乗効果を発揮する取り組みとなっていくことを期待する。
3.瀬戸内海遊交流プロジェクト・観光旅客船
牛窓港を母港として、犬島、直島、長島などの島々を結び、海を通して沿岸地帯・島嶼部の活性化に取り組む海遊交流プロジェクトは、小型ボートに加え、40人程度乗船できる観光旅客船を新たに保有した。今後、当プロジェクトの実行体を組織化した上で、島々の住民、活動団体、観光施設等と連携して、観光、島巡り、海洋体験などを企画し、海を通して地域の活性化と海の環境保全意識の向上に取り組む。

活動の課題

沿岸地帯・島嶼部ゾーンの地域整備ビジョンが、地元自治体にはない。そのため、地域活動が一つに集約されることなく、主な活動主体が、限られた地域で相互に連携することなく活動している現状では、地域活動を地域再生や持続可能な地域づくりに繋ぎ活かすことが難しいと思われる。厳しさが一段と増す地域の状況を真摯に受け止め、地域再生の活動担い手育成や、関係者の早急な取り組みが、活動に取り組む上での課題である。

  • 牛窓港を母港として島嶼部を結ぶプロジェクト

  • 瀬戸内市沿岸・島嶼部の都市構造の再編

  • 40人程度乗船できるレトロな観光旅客船