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- アチックフィルム『塩飽1&2』の被写体分析と映像資料の地域還元に関する研究
瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
本研究は、アチック・ミューゼアムによって昭和12年に撮影された瀬戸内海島嶼部の映像について、今昔の情報を付加し検索可能なものとし、島起こしや環境・景観の復元など、あらたな地域創造の多様な場面において活用可能な資料とし、それらを現地に還元する方法の実践的な研究を目的としている。
活動の経過
今年度は、打ち合わせ(研究会)、資料調査、現地調査を下記の通り実施した。
●平成27年5月22日
場所:神奈川大学日本常民文化研究所
内容:アチック・ミューゼアムが撮影した昭和12年の映像や写真について原資料の閲覧。今年度の調査方針の打ち合わせ。
●平成27年7月1日
場所:財団法人宮本記念財団
内容:アチックの調査に参加した宮本馨太郎が撮影した写真や撮影メモの原資料の閲覧・撮影。
●平成28年2月2日~4日
場所:岡山県八浜・香川県与島、男木島、女木島
内容:アチックや宮本による写真・映像の被写体についての現地現況調査を実施。被写体内容についての検討会の実施。
●平成28年3月28日
場所:財団法人宮本記念財団
内容:宮本馨太郎が撮影した写真や撮影メモの再撮影、新出の調査メモの閲覧・再撮影。年度末の打ち合わせ。
活動の成果
今年度は初年度ということもあり、また調査対象地と研究拠点が離れているなど、不安と課題を抱きながらのスタートとなった。アチック・ミューゼアムによって昭和12年に撮影された瀬戸内海の映像や写真に関して、被写体に関する情報が失われていたり、詳細な情報がわからなかったりするものを、聞き書きや資料調査によって補完していくという作業の中で、今年度は大きく次の成果をあげることができた。
それは、調査に参加した宮本馨太郎の資料を保管している財団法人宮本記念財団の所蔵資料の中に、往時の調査写真に加えて、調査メモ、写真の撮影メモなどを見つけることができたことである。これにより、今から80年ほども前の学術調査の詳細な行程に加えて、島々での被写体となった人々の氏名や年齢など、写真や映像からでは窺い知ることができない詳細な情報を入手することができた。
これらの情報をもとに現地調査を実施し、経年による景観の変化はもとより、島民の方々からの聞き書きによる情報などをさらに重ね合わせて蓄積することができ、それらをもとに研究報告書をまとめることができた。
当初抱いていた不安や課題はあったが、頻繁に現地に訪れることができないという研究環境が、逆に遠隔地に眠る基礎資料を丹念に洗い出すという成果に結びついたと考えている。
共同研究者や新たに招聘した研究者の協力もあり、今年度は今後の研究の基礎作りをすることができ、実りの多い一年とすることができた。
活動の課題
鉄道・自動車・船といった公共交通機関によって現地調査を進めたが、訪問することができる島々に制約が生じ、限られた調査日数の中で、多くの島々を訪ねることの難しさを実感した。また今回は、道端での出会いを大切にしつつ聞き書き調査を実施したが、調査で得られた情報については、関係機関とも相談して、広く還元していくことが必要であると考えている。
昭和12年に撮影した映像。香川県与島の天津神社から見た鍋島灯台
同じ場所から、宮本馨太郎が撮影したスチール写真
現在の与島。瀬戸大橋が景観に変化を与えた一方、変わらない家並みも