瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

高原水車保存復元・活用 2016

高原水車友の会 池森 寛・平田恵美

活動の目的

江戸・明治期から続く水車場としては、四国地方で貴重な存在として、評価が高まっている。現存する水車と器械類の調査に始まり、動態保存を目的として、研究者とともに讃岐の水車の技術を解明してきた。古い水車の保存と新調を同時に実現し、地域の文化遺産として、広く発信していきたい。

活動の経過

高原水車保存活動が始まって、すでに8年目に入る。保存活動に携わっている高原水車友の会活動も4年目に入り、水車場の整備に根気よく取り組んでいる。
・2016年度は4月の第3回総会で、国の登録有形民俗文化財になったことを祝い、研究者や水車大工さんから「讃岐の水車大工の高度な技術」について講義を受けた。その後、動態保存に向けて念願の木材(肥松)が確保でき、現在乾燥中である。
2017年度中には、新しい水車が回ることも夢ではない。
・毎月最終土曜日に公開日を設けているが、見学者も多く、小学生の学習、地域の子ども会、「さぬき村塾」「ふるさと探訪」「福祉施設」などの見学者を迎えている。また丹南市美山から茅葺き職人さんを迎え、貴重なお話を聞くこともできた。
・友の会メンバーの努力で、水路の暗渠部分(水車前後60メートル)の撮影に成功し、石積みが健全であることを確認した。開渠部分の石垣修復も専門家によって無事完了した。
・冊子を編集中であるが、とりあえずわかりやすいパンフレットが完成した。

活動の成果

江戸から明治期の水車が保存されることは、現代のような先端技術と人工知能の時代にどのような意味があるのかと戸惑うこともあるが、手作りの道具や器械の動きから、大人も子どもも新鮮な刺激を受けることと信じている。
2016年度の活動で特筆すべきことに次のようなことがあると思う。
(1)溜池の水を利用して稼働してきた讃岐の水車には、少ない水量で最大限の力を発揮するための高度な技術が詰まっていることを学んだ。
(2)池森教授とともに「水量測定」を行っているが、水量の調節によってどのような力が得られるか、その調節技術を伝承していけるかどうかが課題となっている。
(3)友の会の自前の工作技術で、長い石垣水路の中を撮影できたことは、画期的で感動的であった。
(4)多くの見学者を迎えるなかで、近所の福祉施設の人たちがとても喜び、工作などの作業を楽しんでくれたのは、将来に向けて一つの示唆を与えてくれた。
(5)水路の開渠部分は水路築造以来はじめての解体修理となったが、石垣の個性や特徴を見ることができた。
(6)水車の復元はもとより、古い建物の修復も、難題である。藁葺き屋根を復活させるためには、小麦の長い藁を確保しなければならないが、これも難題である。全国的な動きについて学習できたことはありがたい。
(7)冊子の編集途中であるが、A3版のパンフレットが完成したので、さらに広報ができる。

活動の課題

九州の松材であるが、現在乾燥作業に入っており、水車復元の工程も見えてきた。秋には水車大工さんの工房や製材所を見学する予定である。古い水車の撤去と新しい水車の据え付けには、香川の大工さんにも関わっていただき、技術の伝承をしていきたい。次の課題は、水車守のような管理体制を作っていくことである。地域の協力や香川県や高松市の協力を得ていきたい。

  • 第3回高原水車友の会総会。今後の復元工程が話題に

  • 林小学校3年生130人が見学。熱心に話を聞いてくれた

  • 水量と速度を測る友の会メンバー