瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

古刺繍の探究を通じて、太鼓台と地歌舞伎との関係性を深める 2016

観音寺太鼓台研究グループ 尾崎明男

活動の目的

① 古刺繍における地歌舞伎古衣裳と太鼓台古刺繍との酷似を学ぶこと。
② これまで実施してきた伝統異文化間の「合同活動」(協力体制)をさらに進展させること。同時に、地元の皆さまを巻き込んだ伝統文化の調査・研究にすること。
③ 双方文化の関連を成果報告書冊子にて情報発信すること。

活動の経過

酷似する古刺繍を持つ地歌舞伎と祭礼の太鼓台。ともに瀬戸内中心に広まる華やかな伝統文化。太鼓台側ではほとんど消滅してしまった古刺繍は、地歌舞伎側ではまだまだ多くが古衣裳として遺されている。グループでは、酷似する古刺繍が伝わる地歌舞伎(保存会・自治会等)の協力を得て、これまで、高松市・農村歌舞伎祇園座(2014)、土庄町・小海自治会(2015、地歌舞伎は廃れた)、小豆島町・中山農村歌舞伎保存会(2016)と、貴財団の助成を賜り、積極的に撮影・調査・研究・情報発信を続けてきた。
これまでの助成活動では、数多くの新たな酷似点が確認できている。太鼓台側からすると、太鼓台に採用されている古刺繍の歴史(=太鼓台の歴史と言っても過言ではない)を客観的に知ることは、大きな悲願でもある。
これまでの地歌舞伎との共同活動を通じ、多少なりとも双方異文化の地元への成果還元もできたと考えている。最終的には、地歌舞伎・太鼓台の『古刺繍のデータベース化』を目指す。

活動の成果

① 地歌舞伎側地元皆さんの協力体制がありがたかった。これまでの地歌舞伎3団体からは、いずれも労力を惜しまない大変な支援を受けることができた。地方の伝統文化を再発見して伝承していくことは、地歌舞伎でも太鼓台でも、全く同じだと感じた。「合同活動」からの体験は、今後の双方の力やバネになると実感できた。
② 当グループでは、男女を問わず若い世代の参加者が、回を重ねるごとに増えた。そして、調査・活動の場では、全員が一心不乱に取り組んでくれた。このことは、私たちグループの今後のあるべき方向性を示し、グループとしての責任や存在感が増していると確信できた。参加者全員が、大きな自信になったと思う。
③ 猛暑での「かき氷ボランティア」やフェリー会社の「航送料割引」などの温かい支援も、島内から自発的に賜った。同じ太鼓台文化圏でもある小豆島の皆さまからも、好意を寄せていただいているという実感が、大変励みになった。
④ 具体的な成果としては、
a. 地歌舞伎側団体への成果還元(衣裳撮影データの提供・アルバムの提供・報告冊子発行と提供)を行うことができた。
b. 太鼓台側としては、酷似古刺繍の確認やデータ等の基礎資料が得られ、今後の研究に活かせることとなった。
c. 発行した報告書『地歌舞伎衣裳と太鼓台文化・Ⅲ』は、関係各地の公共図書館等へ寄贈でき、多少なりとも役立てていだけるものと思う。

活動の課題

やり残している他の地歌舞伎団体(2~3団体)の古衣裳の調査・撮影・研究を、今後どのようにやり遂げていくかが、資金面を含め当グループの最大課題である。決して中途半端で終わらせてはならない。最終目標の「古刺繍のデータベース化」を成し遂げ、協力いただいた皆さまに、ぜひとも恩返ししたい。

  • 撮影前の記録と概要調査

  • 太鼓台も、地域の宝となっている