瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

伊吹島民俗資料館の整備

伊吹島研究会 三好兼光

活動の目的

香川県観音寺市の伊吹島には20数年前に島民自らの手で作り上げた民俗資料館がある。解体された家から出た道具類、使わなくなった道具類を持ち寄り開設したもので、20数年を経て、管理する島の有志も少なくなり、資料、建物の劣化もあり、所蔵品が何点あるかも把握できていない。資料の散逸、盗難、消失等危機管理面で不安がある。島の宝を次の世代につなげる活動を実施した。

活動の経過

資料館開設にあたり中心的な存在であった島出身の教育者、久保先生が亡くなり、島の協力者も多くが他界し、資料館を維持する人が限られてきている。資料館の管理は観音寺市が行っているが、運営は島民の力に負うところが大きい。観光客、市内の小学4年生の体験学習の場として活用されている。
1年間の活動計画として
①館の美化維持活動
②建物の劣化防止、補修
③収蔵品の劣化防止、データベース化
上記3点を中心に伊吹島民俗資料館の魅力を高める活動を1年間実施した。
①に関しては老人会の年間行事として毎年資料館中庭の草取りを行っているので、その行事に参加させていただいた。また、アサギマダラ飛来地として中庭の整備を行っている「飛翔の会」の活動に協力した。
②に関しては研究会のできる範囲で行った。
③に関しては、地域支援活動を行っている香川大学の学生たちと資料のデータベース化に取り組んだ。地味な作業であったが、収蔵品把握ができた。

活動の成果

1年間の活動計画を終えて
①については、老人会の草取り以外に会独自の草取りを夏、秋の2回実施。中庭に木製のテーブルを設置し、来館者に喜ばれた。フジバカマの苗を50本追加で植え、秋にアサギマダラの乱舞が見られた。2019年秋の瀬戸芸にはもっと植え、来島者に喜んでいただく。
②については、屋外展示物上のトタン屋根が腐り、展示物が風雨にさらされていたので、屋根の補修と延長を実施した。ベニヤ板がはがれていた玄関先の倉庫の扉を補修し、来館者を気持ちよく迎えることができた。
③については資料館の収蔵品が全部で何点あるか20数年間、誰も把握してなかった。気の遠くなるような収蔵品のデータベース化を2月末ぎりぎりまで行った。収蔵品1点1点に絶対番号の符牒を取り付けて写真に収め、パソコンに品名を入力した。当初品名、寄贈、寄託の区別、大きさ、道具の使われ方等を入力しようと計画したが、あまりにも時間がかかるので、品名だけにした。収蔵品は七つの部屋と屋外に置かれているが、香川大学の学生たちに2室協力をお願いした。収蔵品は全1,520点あることが判明。今回全収蔵品を手にすることができ、あらためて貴重な資料を保管していることがわかった。大切に守っていきたい。成果物として1年間の記録をまとめた冊子を400部印刷した。香川大学でも図録を印刷した。データをハードディスクに保管し、危機管理の対策ができた。入口廊下に図書コーナーも設け、資料館の魅力を高めた。

活動の課題

島の人口も減り、島民手作りの民俗資料館を維持していくのは大変だが、島の若い人、島外で活躍する島出身者、漁村、民俗、言語、産育習俗等を研究している先生方の協力をいただきながら、活動を今後も続けていきたい。建物の劣化、補修に関しても行政と連絡を取り、いい方向に進めていきたい。

  • 伊吹民俗資料館正面

  • 収蔵品のデータベース化 香川大の学生たち

  • 活動の記録の冊子、図録、ハードディスク