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瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
香川県出身の画家・和田邦坊の絵画調査を行った。邦坊の遺作は、灸まん美術館(琴平町)、あるいはかまどホール(坂出市)に所蔵されているが、昭和47年の個展で展示した絵画の所在が明らかになっていない。今回は、個人宅・店舗に展示・収蔵されている作品を追跡するとともに、これまで注目されていなかった画家としての活動を香川だけでなく東京までエリアを広げて調査した。
活動の経過
平成28年度は、和田邦坊のパッケージデザインについて報告するため、県内にある企業を訪問して聞き取りを行った。そこで、店舗や個人宅に伺うと比較的大きな邦坊の作品を目にすることが多くあった。なかには、ほとんどが所在不明となっている昭和47年の個展の作品もあり、意外にも店舗や一般家庭に和田邦坊の作品が眠っていることがわかった。そこで、絵画調査とデザインについて同時に調査するようになった。
新聞漫画家、小説家、デザイナー、そして画家というさまざまな顔をもつマルチクリエーターの和田邦坊は「香川のデザインは和田邦坊のデザイン」と言われるほど活躍していた。しかし、郷土史の研究としても、これまでどの活動についてもほとんど検証されていない人物である。純粋な画家として捉えるよりも、マルチクリエーターとしての実績を総合的に研究し、平成31年の生誕120周年に向けて成果を発表していきたい。
活動の成果
<香川編>調査対象にした作品は、これまで一般に公開されていない個人所蔵の作品(原画)と最初で最後に開催された個展で発表された作品とした。情報を精査して10人以上の聞き取りを行ったうえで現地調査を行い、記録撮影した。調査先での情報をもとに数珠つなぎのような紹介を受け、西讃まで調査することができた。
<東京編>東京にある「つづらそば」の天井絵の撮影調査を行った。天井絵は、大津絵の図柄と香川県内でたびたび目にするモチーフが多く興味深い発見を得ることができた。また、東京での聞き取りで、新たに邦坊がプロデュースした飲食店があることが判明した。すでに廃業していたが、店内にあった絵画は、香川県にある灸まん美術館が所蔵しており、香川に戻った後に作品を調査することができた。
<成果物と発表>図版をまとめた報告書を100部製作し、郷土資料として県内の文化施設に配布した。また、報告会イベントをブックカフェで開催。絵画調査の内容をスライドで紹介し、撮影に協力していただいた写真家とアフタートークを行った。香川と東京を調査して、邦坊の絵画作品は、純粋に画家として制作した絵画だけでなく、内装デザインの一つとして制作した絵画も多く含まれていることがわかった。画家でありデザイナーとして絵を描く姿勢は、邦坊独自のスタイルとして注目できる画業といえる。
活動の課題
課題としているテーマ・調査活動は以下の通りである。
・和田邦坊に関する聞き取り調査の継続
・初代館長を務めた讃岐民芸館の資料調査
・農事講習所時代の活動について
・香川県知事金子正則の県政事業について
香川県在住の個人所蔵の絵画。応接間に展示していた。邦坊の元同僚の方が新築祝いにもらったという作品
「つづらそば」(東京都)の天井絵の展開
3月21日に開催した報告会イベント。撮影した絵画を紹介しながら調査の振り返りを行った