瀬戸内海地域振興助成成果報告アーカイブ

上島町における「空き家の利活用による移住促進」を主な事業内容とする NPO スタートアップ

特定非営利活動法人 かみじま町空き家よくし隊

活動の目的

私たち特定非営利活動法人かみじま町空き家よくし隊は、「空き家の利活用による移住促進」を主な事業内容として、2021年10月に愛媛県越智郡上島町において、活動を開始した。①空き家を入手し、②すぐに入居可能な状態に改修・整備し、③移住希望者に貸し出すことにより、④その家賃収入を次の空き家の改修費に充てる、というサイクルでの事業展開を目指している。当法人の活動の趣旨に賛同していただいた町内の空き家物件の所有者と出会い、当法人に同物件を寄付していただけることが決まった。ただ、当法人は活動を始めたばかりであり、最初の物件を入手・整備する原資がなかった。そのため、最初の物件の整備費用を調達する目的で、本助成を申請した。

活動の経過

2022年度の事業年度が始まってすぐ、当該物件の所有者様と登記移転に向けた交渉を開始した。所有者様には、手続きのため上島町まで来ていただけることになったが、山形県にお住まいであり、交通費は当方で負担させていただくことにしたため、事前に想定していなかった旅費交通費が計上されることとなり、その支出は大きなものとなった。
空き家物件の当法人への登記移転は6月6日に無事完了しました。さっそく物件を確認し、敷地内の草刈りと建物内の清掃を行った。特に汚れのひどかった台所については、専門業者に清掃を依頼した。空き家に残置物はほとんど無かったため、残置物の撤去費用として計上していたその他・諸経費の使用はなかった。また、空き家の建物としての状態は良好で、改修は2階のカーペットの張替えと巾木の交換のみで「すぐに住むことにできる状態」となった。そのため、改修に必要な材料や資材の購入費として計上していた消耗品費の使用は、事前の想定の約5分の1で済んだ。整備は約2カ月で完了し、8月上旬より、私たちの知人で、上島町に拠点を持ちたいと希望されていた方にお貸しした。
ただ、物件のガス給湯器が故障しており、その修理費として予算を大きく上回る出費が必要だった。業者にはその支払いを待っていただいて、当法人への家賃収入が必要額に達した12月になってから、その費用をお支払いした。この経費は、謝金・委託費・人件費の項目からお支払いした。

活動の成果

本活動の最大の成果は、最初の空き家物件の整備によって、①当法人の実績をつくることができたことと、②毎月の家賃収入が入るようになったことの2点。2022年8月の空き家物件整備の完了は、当法人にとっての一つの節目となり、地元県紙である愛媛新聞に取材していただき、記事として掲載・紹介していただいた。本事業の経費として、当初の想定を大幅に超える額が必要となったため、事業年度中に大幅な収益を確保して次年度に備える、とまではならなかったが、毎月入る定額の収入を確保できたことによって、次年度以降の活動に明るい見通しを抱くことができた。活動名に入れさせていただいた「NPOスタートアップ」を目的とする事業としては、当初の目的を達成することができたと、私たち自身、振り返って評価している。
当法人として最初の整備物件だったこともあり、学んだことが多かった。具体的には、①登記移転の手続き、そして②空き家の整備において、私たち自身の手によりDIYで改修できることと専門業者に依頼することのそれぞれの作業項目と金額だ。当法人では、本年度に本件とは別の事業として、町内の別の島でもう1軒の空き家の整備を行った。そこでは、配電盤の電気工事とトイレの交換が必要となった。本事業の給湯器、そして別事業の配電盤、トイレ交換などは、資格が必要になることから専門業者に依頼するしかない箇所であり、今後の空き家物件探しや評価において、本年度の経験を活かすことができると考えている。

活動の課題

今回の空き家の状態が、専門業者に依頼せざるを得ない箇所があったものの比較的に良かったことは幸いなことだったが、私たちのDIYの技術を高めるには作業量が少なかったと感じている。今後の課題としては、次の物件以降の空き家の整備において、DIYの実践を積んで、私たちの技術を高めていくことだ。
今後の展望として、1事業年度につき1軒から2軒の空き家の改修整備を目指している。管理する所有物件が増えれば、比例して家賃収入も増える。そうなれば、改修整備の参加者に正当な賃金をお支払いできるようになって参加者も増え、上島町における空き家の整備事業が加速していくことを期待している。

  • カーペットと巾木の張替作業

  • 草刈りなど敷地内の整備作業

  • 改修工具を手に作業場で