アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

郊外都市・ユートピア~団地と農~

特定非営利活動法人 取手アートプロジェクトオフィス

実施期間
2014年4月~2015年3月

活動の目的

団地コミュニティーに対して行われる《アートのある団地》、空き家という社会課題と対峙する《取手アート不動産》、都心や里山の中間地点で新たな文化を創造する《半農半芸》、以上の3事業を実施することでアートが人々の心を触発し、新たな価値が創出される。

活動の内容

◎アートのある団地:TAPが井野団地内で運営するカフェ「いこいーの+Tappino」を拠点として、3組の若手アーティストが定期的に滞在、アートプロジェクトを実施する。
◎半農半芸:拠点TAKASU HOUSEでは展覧会、ワークショップを実施、地区の行事にも参加しながら、地域の核となる施設になることを目指す。東京藝術大学との連携により天然染料から抽出する絵具の開発研究を長期的に実施中。
◎あしたの郊外:取手市内にある空き家に対して全国から作品プランを募集、住居物件に付加価値として取り入れられ、新しい住み手を見つけ中古住宅の再流通を図る。
実施場所: 茨城県取手井野団地内活動拠点いこいーの+Tappino他、茨城県取手市内各所

参加作家、参加人数

◎アートのある団地:北澤潤、宮田篤+笹萌恵、深澤孝史 参加人数:延べ3,800名
◎半農半芸:岩間賢、風景と食設計室ホー、鈴村敦夫、岡博美、塩月洋生 参加人数:延べ1,000名
◎あしたの郊外:馬場正尊、池田修、目、栗栖良依 参加人数:延べ500名

他機関との連携

行政や企業との連携は資金・物品提供による協力など多岐にわたる(ex.東日本ガス、UR都市再生機構など)。また、半農半芸ではアートと産業が融合する商品開発を企業・NPO(日本畜産振興株式会社、NPO法人バイオライフ)と共同で実験的に取り組んでいる。

活動の効果

「アートのある団地」では、いこいーの+Tappinoで行われる3組のアーティストの活動が継続展開されることにより、活動が成熟してきている。宮田篤+笹萌恵による「ちくちく校歌」では、児童や学校をはじめ多くの卒業生や地域住民の参画を得て活動が実を結んだ。「半農半芸」では、2015年1月より実施本部事務所をTAKASU HOUSEに移転し、日々の活動が地域住民の目に触れることで、相乗的な活動周知を行うことが可能となった。次年度以降もさらに、活動回数を増やしていきながら、地域との接点をつくる。

活動の独自性

都会と里山の中間地点のような地域特性を持つ「郊外都市」ならではの資源(団地/農)を活用し、通年型のアートプロジェクトを継続している点で他のプロジェクトにはないものを有しているといえる。
高度経済成長の象徴である団地と、古来から続く農文化、これらがアートを媒介に共存していける社会モデルこそが、取手が生き残っていくための道筋だと考えられる。そのためにも高齢化社会、空き家などの社会課題にも積極的にコミットしながら、現代アートの新たな役割を社会に提案していく。

総括

いこいーの+Tappinoでの活動や、戸頭団地の壁面アート作品化事業「IN MY GARDEN」が完成し、《アートのある団地》プロジェクトでは、これまでの活動が一定の成果を見せつつある。事務所の移転も行い、今後はTAKASU HOUSEの拠点化、地域住民との交流、対外発信の強化など《半農半芸》プロジェクトが次の大きな成果を上げられるように進めていく。収益事業化を見据え、地域資源とアーティスト視点を組み合わせてのプロダクト開発は早期に着手したい。《あしたの郊外》では、事業3年目にあたり、集大成の年となる。2016年度に向けて、残す部分/終える部分を収益事業化という指標で精査していく。活動全般に言えることは、現在の事務局スタッフ(4名)の次の人材を育成することが急務である。全国的にアートプロジェクトの数は増えたが、専門的スキルを持つ人材は乏しく、人材不足は分野全体の慢性的課題である。経営基盤を確固たるものにしなければ、継続的活動は行えないし、地域に対して責任を負った活動を行うことはできない。人材育成の他にシードマネーの確保(個人寄付、受託事業、プロダクトの開発など)に次年度は取り組んでいく。