アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

ゼロダテ美術展2014 (及び、地域コミュニティーにおけるアーティスト・イン・レジデンスと「アートを活用した持続可能な地域活性化モデル」事業)

大館市教育委員会 生涯学習課 国民文化祭推進室

実施期間
2014年4月~2015年3月

活動の目的

2007年より活動を続けるゼロダテアートプロジェクトと連携し、中心市街地空洞化や少子高齢化などの課題を抱える地域において、自然と社会が寄り添いながら共生するなどの文化的地域資源を活かし、市民とアーティストの協働を通して、「アートを活用した持続可能な地域活性化モデル」の構築を目的とする。

活動の内容

2014年秋田県では、「第29回国民文化祭・あきた2014」が行われた。本事業は、隣接する北秋田市と連携して「大館・北秋田芸術祭『里に犬、山に熊。』」として開催した。
大館市では、中心市街地の空き店舗や空き地等の36会場に、地域因子(地域のなかの眠っている資源)とアーティストがコラボレーションした作品展示を展開した。北秋田市会場では、ローカル線である内陸線の自然豊かな沿線地域の集落・空き家・廃校などを会場に実施された。
大館会場では、現代アートの展示・音楽コンサート・パフォーマンス・ワークショップ・演劇・アーティストトークなど多様なプログラムが行われた。
実施場所: 秋田県大館市 大町商店街、御成座、大館市樹海体育館、大館市立桂城小学校、他

参加作家、参加人数

本芸術祭は、統括ディレクターに中村政人(敬称略、以下同)、アートディレクターに立木祥一郎、田宮慎を迎え、参加作家にはパトリシア・ピッチニーニ、佐々木耕成、折元立身、日比野克彦、鴻池朋子、藤浩志、佐藤直樹、池宮中夫、都築響一、平田オリザ、高橋よしひろ、鈴木理策、納谷学+納谷新、宇川直宏、遠藤一郎などが参加し、期間中は29,423人が来場した。

他機関との連携

地域の商工会議所や商店街振興組合など諸団体、教育機関、企業、メディアなど様々なレベルで連携した。また秋田市・隣接地域の文化施設や東京では3331 Arts Chiyodaの協力を得て広報活動などを実施した。

活動の効果

実施地域では美術館やギャラリー等がなく、市民が美術をはじめとする表現活動に触れる機会が少ない。本芸術祭では国内外で活動する美術家・建築家・劇作家・写真家・漫画家などの多様な表現や、アーティスト・イン・レジデンスなどを空き家や空き店舗などで展開したことで、市民だけでなく他地域からの鑑賞者が芸術祭を訪れ、アート鑑賞だけでなく、地域の魅力や課題を再発見する機会となった。

活動の独自性

また、空き家や商店街の空洞化、少子高齢化など地域が抱える課題に対して、アートプロジェクトや市民が向き合い、活動を持続している。地元出身のアーティストや市民らが地域の歴史や想いを継承しながら、地域資源をアーティストの目線で再発見・再発掘していくことで、地域の文化・社会・経済を刺激し、課題を解決しようとしていることは、他のアートプロジェクトや芸術祭とは異なる部分である。
本芸術祭では、温泉や秋田犬、旧正札竹村デパートなどの「地域因子」×「アーティスト」という構図を明確にして、地域とアートが結びついた作品を全面的に展開した。

総括

アートプロジェクトや芸術祭が日本全国各地で多数行われている昨今、文化やアートは地域やコミュニティーの活性化だけでなく観光と結びつき、全国的にアートファンが増えている。大館市・北秋田市は地理的・公共交通網的にアクセスしづらい不利な環境ながらも、県外の来場者も多数見られた。大館商工会議所が行った通行量調査によると前年比3.45倍(休日)となったことにも、事業の効果が顕著に見られる。
地域因子とコラボレーションした展示は、秋田犬・秋田杉・温泉・高齢化などアートではない観点から作品を鑑賞できることもあり、県内はもちろん県外からきた来場者にとっても新たな発見や気づきを得られやすいものになった。また、パトリシア・ピッチニーニによる大型気球作品「Skywhale」の係留飛行や、平田オリザ演出による「アンドロイド演劇」、現在も使用されているトンネル内で実施した宇川直宏のキュレーションによる「根子フェス+DOMMUNE」(北秋田市根子)など、国内でも体験することが難しいプログラムを多数開催したことにより、国際展にもひけをとらない芸術祭となった。