アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

東北と世界を結ぶ祭博2015

一般社団法人 三陸国際交流協会

実施期間
2015年10月15日~18日

活動の目的

文化庁新進芸術家海外研修制度で研鑽を積んだコンテンポラリーダンスの振付家が東北に赴き、郷土芸能に内在する日本元来の身体表現をすくい上げ、日本独自の表現を伴い、世界へ発信できうる作品を創出する。郷土芸能という文化的資源を世界に発信し、被災地の復興に繋げていくことを目的とする。

活動の内容

コンテンポラリーダンスの新進振付家2名が、地元の郷土芸能を吸収し、そのエッセンスをすくい上げ、取り入れたものを基に創作した「鹿神楽」を披露した。
東北を代表する祭りと、三陸沿岸被災地での復興を牽引する鹿踊・虎舞がそれに華を添えて競演した。アジアとの橋渡し役として、韓国全土に分布し地域の風土の中で育まれてきた伝統芸能「農楽」のグループが参加した。
本祭前には、農楽グループと鹿踊・和太鼓グループ、中学生との親睦ワークショップをそれぞれ実施した。
実施場所:岩手県大船渡市 盛町一帯(県道230号線沿道)

参加作家、参加人数

東京都「鹿神楽」、岩手県盛岡市「さんさ踊り」、秋田県秋田市「竿燈」、宮城県仙台市「すずめ踊り」、山形県山形市「花笠踊り」、岩手県大槌町「臼澤鹿子踊」(大槌町)、岩手県大船渡市「門中組虎舞」、韓国「トブロン農楽団」
計8団体 総勢400名が集結し、それぞれの演目を披露した。

他機関との連携

大船渡市観光物産協会(同時開催イベントでの告知協力・演目披露)、盛青年商工会(スタッフ協力ほか)、ショッピングセンターサンリア(プレイベント会場提供・告知協力)、大船渡市郷土芸能協会・住田町役場(親睦ワークショップ手配ほか)

活動の効果

祭博を開催することで、郷土芸能が新たな魅力として観光資源となっていき、被災地復興の礎となった。また、現代的で国際的な祭りに発展することで、若年層に興味を持たせ、地域に誇りを感じ、若者の祭り離れ・地域離れを防ぐことができた。そして、地域の後継者が育成され、表現活動を通じたまちづくりができた。この試みは、2020年の東京オリンピックに向けて、強度を高めていき、ユニークな国際フェスティバルとして世界に認知されることが期待される。

活動の独自性

三陸地域独特の個性と活気を持った郷土芸能、海外の卓越した技術と迫力を兼ね合わせた伝統芸能、そして現代の新進気鋭の振付家たちによる演目が競演したことにより、これまでにない化学反応が生まれ、国際的で現代的な祭りになった。
郷土芸能が、地域住民にとってただ「いつもある」存在から、「庶民の芸術」として世間的にも再評価されていくことによって、若年層などが興味を持つようになる。東日本大震災後、地元の祭りと絆を大事にする雰囲気は全国的に起こっているところであるが、今回の事業により、今後さらに地元の人がその地域に誇りを感じ、若者の祭り離れ・地域離れを防止する一助となる。

総括

郷土芸能を取り入れたコンテンポラリーダンス「鹿神楽」の披露により、観客には違ったタイプの芸能に触れてもらうことができた。今までの郷土芸能ファンにも目新しいものとして提供できた。また、新しく郷土芸能に興味を持ってくれる方々が増えたと思われる。
今年度は、初めて海外から伝統芸能団体を招聘した。郷土芸能や伝統芸能を通じての国際交流を行うことができ、当地域では新しい取り組みであった。来日したトブロン農楽団による交流事業では、住田町役場などでのパフォーマンスや交流、三陸町越喜来での中学生との交流、当事業と同日開催のイベントである「大船渡市産業まつり」への参加など、積極的に市民と交流を行った。芸能の交流は、子どもたちや地域の人々にとっても、貴重な体験となり、良い刺激になったといえる。またトブロン農楽団の方々にとっても、交流事業はとても良い経験・体験になったとのこと。
さらに、本年度で5回目の開催となったため、周辺の方々からの認知度が高くなった。有料観覧席の前売発売初日には、130枚のうち90枚が売れ、発売1週間ですべて完売した。その上開催前から、市外からの問い合わせも多かった。

  • 振付家が東北に赴き、創作した「鹿神楽」

  • 東北を代表する祭り「花笠踊り」(山形市)

  • トブロン農楽団と中学生との親睦ワークショップ