アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」

別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会

実施期間
2015年4月1日~11月30日

活動の目的

魅力ある地域づくりが最重要課題となっている別府市にて、現在まちづくり団体やアートNPO等の活動によって、多様性を受け入れ変化に対応した地域社会を支える文化基盤の創出が図られつつある。このような地域×アートの取り組みは、県内各所で展開され始めており、それらを連携させる仕組みづくりの中核事業として本事業を位置づけ、全体の相乗効果を図った。

活動の内容

2009年より3年に1回開催しており、3回目となる本事業では「世界は不思議に満ちている」をテーマに、ライブ感溢れる、特徴的なさまざまなプロジェクトを市内各所で展開した。中核となったのは、二つの完全予約制のツアー型プログラムである。ひとつは案内人に導かれ、別府の内奥へと旅立つ「アートゲートクルーズ」。もう一つはまちを劇場と考え、さまざまな場所で展開されるダンス作品を見て回る「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」。その他、「永久別府劇場・恐怖の館」「わくわく混浴デパートメント」といった、予約不要で参加ができるプログラムを設けることで、全体のバランスを取った。鑑賞者はパスポート型のチケットを購入し、まちを巡るように各プログラムを楽しんだ。実施場所:大分県別府市内各所(中心市街地エリア、鉄輪エリア、浜脇エリア、港エリア)
芸術祭期間:2015年7月18日~9月27日

参加作家、参加人数

参加作家:265組
参加者数:107,299人(混浴温泉世界53,825人・ベップアートマンス53,474人)

他機関との連携

主に別府市と連携を図ることで、空き店舗等を舞台にツアーなどを開催し、場所の魅力の再発見につなげることができた。また、国際交流基金と共催することで、アジア各国のダンサーによるプログラムを実現することができた。他、大分市、別府市内の旅館・ホテル・大学、JR等、連携機関は多岐にわたる。

活動の効果

来場者については、過去2回に比べて、日帰り客よりも宿泊客(宿泊日数2泊が最多)の割合が増えた結果となった。これは、本事業の目的でもあった地域×アートの取り組みの広域連携の効果があったものと思われる。また、若手アーティストの展覧会である「わくわく混浴デパートメント」や「永久別府劇場・恐怖の館」を中心に、別府市民、大分県民が表現者として参加する場面が多く、市民の創造的活動という観点からも大きな効果があったと思われる。また、県内他地域の取り組み等と連携した広報(県単独予算によるフリーペーパーの制作)により、大分市や国東半島など、県内各地のアートプロジェクトへの参加者も増加するなど、観客の循環が生まれた。

活動の独自性

同時期、市民文化祭である「ベップ・アート・マンス 2015」や「KASHIMA 2015 BEPPU ARTIST IN RESIDENCE」、「BEPPU PROJECT 2015」といった、多数のアートプロジェクトを同時開催することで、この期間、別府のまちの各所でアートが展開するような、総合的な見地からのプログラム配置も考慮した。また、ガイドが付く少人数制ツアーという作品鑑賞形式をとることにより、別府の独特な地域性とアート作品をより深く感じてもらえる仕組みを確立した。

総括

本委員会では、2009年より混浴を3年に一度、2010年よりBAMを毎年開催してきたが、3度目となる本事業は今回を10年の活動の集大成と位置づけ、一時休止したうえで、新たなかたちを模索していく。
片や、ここ10年間の大分県の動向をみると、国東半島芸術祭(国東市、豊後高田市)、おおいたトイレンナーレ(大分市)など、各地でアートプロジェクトが始まっている。大分市内では2015年4月に大分県立美術館(OPAM)や、JRおおいたシティ、アートな遊具を設置した水族館「うみたまご」の新施設「あそびーち」がオープンするなど、文化・集客施設におけるアートの取り組みも進んでいる。県としてはこれらを大分の文化的なレガシー(未来へ残す財産)として活かすべく、2018年の国民文化祭誘致、2019年のラグビー・ワールドカップ、2020年の東京五輪において、県内で多彩な文化プログラムを実施する長期計画を策定している。その中で、現代芸術フェスティバルの先達たる別府市の果たす役割は極めて重要であろう。そして、広域連携の視点を持ちつつも、「別府らしさ」をしっかり出していくことがポイントであり、その意味では、今回のツアー方式や、市民を巻き込んだ取り組みは大きなヒントとなるものと考える。

  • 「アートゲートクルーズ」案内人に導かれる特別なアートツアー

  • まちが劇場となった「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」

  • 若手アーティストの展覧会「わくわく混浴デパートメント」