アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

アーティスト・イン・レジデンス須崎 現代地方譚3

須崎市

実施期間
2015年10月17日~11月29日

活動の目的

市街地を舞台に、身近な場所での展示を通して、かつて商業が盛んであった地域に新たに芸術、文化交流の拠点を作りだし、これまでとは異なる視点からの地域の魅力を訴求、市内外へ発信し、にぎわいを生み、街の魅力を高めることを目的とする。

活動の内容

県内外より美術作家を須崎市に招聘し、約2週間の滞在を通して地域性をテーマに展示を構築、制作過程を一般公開した。制作した作品は拠点のまちかどギャラリーの他、市内に点在する空家や空店舗を活用し展示した。作家滞在中は地域住民との交流プログラムを実施。キュレーターと作家によるガイドツアーを行い、作品の意図を直に聞くことのできる機会を設けた。展示会期中、地元高校生などがガイドするまち歩きを行い、参加者にまちの魅力を紹介しながら作品解説をした。近隣商店の協力を仰ぎ、関連商品を店頭販売、週末には地域の伝統的な食べ物や特産品の販売を通じ、須崎の食文化の紹介を行った。
実施場所:すさきまちかどギャラリー他、市内周辺各所

参加作家、参加人数

伊藤存、臼井良平、森本美絵、山根一晃、青木陵子、磯谷博、大木裕之、小野象平、クサナギシンペイ、小西紀行、COBRA、八重樫ゆい、竹川宜彰、竹﨑和征、西村知巳、松村有輝、持塚三樹、横田章、川鍋達、キュレーター:兼平彦太郎
来場者:全会場合計約2,500人、普段、人通りのまばらな商店街に若者を中心に多くの人が訪れた。

他機関との連携

移住促進、空家活用事業を行う「特定非営利活動法人 暮らすさき」よりレジデンス施設、展示会場の斡旋、提供を受けた。

活動の効果

「境界を超える」をキーワードに据えたキュレーションにより、多数の作家の個性を活かしながら展覧会として統一感のあるプレゼンテーションが行えた。制作過程に住民が立ち会うことで難解とされる現代美術を身近に感じることができた。廃業した店舗等を展示会場にしたことで、場を懐かしみ来場する人が多くいた。ストーリーを追って展示を辿る会場構成により、まちを回遊する人の流れが生まれ、にわかににぎわいを実感できた。市外、県外からの来場者も増えた。

活動の独自性

作家が回を重ね再訪することで一期一会ではない、作家と住民とが継続的な関係を築き、支援する点がこの活動の特徴となっている。すさきまちかどギャラリーの他、市内の空家・空き店舗を展示会場として利用し、地域との連携を図っている。若手芸術家へ制作・展示の場を提供するとともに、住民との交流を促し、芸術への理解と支援の姿勢を育んでいる。展示を通じて多様な価値観を提示し、新たな視点からの地域資源を見つけ、活用するきっかけを提供する。地域の消費活動の促進と町のPR、美術展に馴染みのない層への足掛かりとして物販、カフェ等を併設した。

総括

3度の開催を通じた試行錯誤の末、徐々に認知度が上がり、来場者も増えている。展示の質も向上した。多数の作家が参加し、展示会場が市内に点在する条件を上手く利用し、来場者が作品だけでなく街を観て歩く仕組みができた。会場や資料の提供などで住民の協力は得ているが、より積極的な参加を促す必要がある。キュレーターズトークは大変好評だったが、美術館などに出かける機会の少ない人により興味を持ってもらうためには、ワークショップなどの体験型のプログラムや学校との連携が不可欠であろう。一方、高知という地理的条件は移動、滞在可能日数に制約を伴う。2週間の滞在期間中に制作と地域との交流を課すのは、作家にとってはかなりの負担となっている。展示の内容と作家へのケア、地域への還元をうまくバランスさせることが今後の課題である。

  • 廃業した銭湯を展示会場に使用

  • キュレーターによるガイドツアーを開催

  • 地元の染物職人と作家との交流