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アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
昔ながらの風景や暮らしが急速に変化しつつある地域において、現代のアーティストと共に住民と関わりをつくりながら、地域に潜在する資源や価値、課題を掘り起こし、まちを新たな視点で捉え直すこと。一人一人の誇り、創造力を取り戻し、多様な個が共存する地域社会の創出に向けた基盤づくりに貢献することを目的とする。
活動の内容
① 築60年の木造アパート「新・福寿荘」の一室を滞在型作品「レジデンス・パラ陽ケ丘」へと転換し、公開展示を行った。
② アーティストと地域住民が相互に影響を与え合う共創の場として「kioku手芸館たんす」を拠点に、約2年継続してきたプロジェクトの展覧会「喫茶たんす」を開催。
③ 新たな創造活動拠点として、元小学校跡地を活用し、校庭に残る陶芸窯を中心に地域に開かれた「作業場」として実験的にプロジェクトを展開。
④ 「西成・子どもオーケストラ」の新たな展開として、地域の児童館や中高生と連携し、盆踊りの生演奏を行うなど、地域や世代を超えた「秋祭」を開催。
⑤ 公立文化施設にて、写真展と連続トークを開催。
実施場所: 西成区山王・今宮エリア周辺、大阪府立江之子島文化芸術創造センター(西区)
参加作家、参加人数
① パラモデル[公開展示:4日]延べ220人
② 薮内美佐子[WS:41日]延べ890人[展覧会:5日]350人
③ きむらとしろうじんじん、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ[作業場をつくってみる!:22日]延べ830人
④ 大友良英、PIKAほか[WS:29日]延べ680人[秋祭]950人
⑤ 草本利枝、酒井隆史、福住廉ほか[展覧会+トーク:17日]850人
他機関との連携
■ 企画運営の協働・連携先:NPO法人まちづくり今宮、今宮ふれあい地域活動協議会、NPO法人アザリア、今池こどもの家、いまみや小中一貫校、西成高校など
■ 広報の協力:西成区役所、飛田地区商店街連合、山王連合振興町会など
活動の効果
空き家や廃校などを活用した創造活動拠点の創出によって、地域における価値や資源の再発見につながり、活動を通して、アーティストや地域住民らがともに新たなコミュニティーの在り方について考える機会となった。連携先である教育機関や福祉施設などの間でも、子どもから高齢者まで多様な世代や層の人々が集う「第三の場所」の必要性について共有することができ、今後のさらなる協働へと展開するきっかけとなった。
活動の独自性
アーティストが地域に入り、実験的な表現活動に時間をかけて取り組む環境づくりと、そのプロセスにおいて地域住民とさまざまな関わりを生み出していくマネジメント、そういった日常の小さな活動を積み重ねていくプロジェクトであること。また複数の活動を点在させ、将来的には面的な拡がりを想定し、地域のまちづくりや福祉といった活動団体や小学校等との連携を積極的に図ると同時に、プロジェクトと地域住民をつなぐ地域コーディネーターの発掘と協働にも注力している。さらに、関わるアーティストにとっても新たな表現活動への挑戦になることを重視している点も活動の独自性と考える。
総括
各創造活動拠点の場所の特性に合わせた活動を展開し、それぞれの場で試行錯誤を繰り返しながら地域に定着しつつある。立ち上げから3年が経過した「kioku手芸館たんす」では、参加する地域の女性たちにとって、毎週の開館日が生活のリズムに組み込まれ、「つくる」ことへの探求心が日常にも着実に影響を与えている。廃校を活用した「作業場」では、世代を超え誰もが立ち寄れる場を目指し、町会や近隣の児童館、障がい福祉施設等との連携を図ることで、高齢化し疲弊していく地域にとって、新しいコミュニティーの在り方を共に探っていく機会となっている。「西成・子どもオーケストラ」では、今回、中学や高校とも新たな連携が生まれると同時に、「秋祭」を通して地域へのさらなる周知を図ることができた。すでに社会人となった初年度からの参加者も本番に駆けつけてくれる場面もあり、年に一度は帰ってくる場所(活動)へと成長した。13年間プロジェクトを継続していくと、活動エリアの住民や連携・協働先から、こういった活動を必要とする声も徐々に増えてきた。今後は創造活動拠点が継続していくかたちを地域と共に考え、しくみを発明していくことが急務であると感じている。
薮内と地域の女性達@kioku手芸館たんす
「作業場をつくってみる!」@旧今宮小学校
西成・子どもオーケストラ「いまみや・踊る・秋祭」