アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

街中芸術祭「玄玄天」

特定非営利活動法人 Wunder ground

実施期間
2015年10月24日~11月27日

活動の目的

福島県いわき市では仮設・借上住宅から原発避難者が入居する復興公営住宅や津波・地震被災者が入居する災害公営住宅への転居が進められ、前居住区において形成されていた「仮のコミュニティー」の分断が発生した。また、従来からのいわき市民と原発避難者間の軋轢問題も抱えていた。そのため、転居先での新たなコミュニティー形成、そして生活の中心となりうる中心市街地に多様なコミュニティーを受け入れる「場」を作ることが求められていた。そこで、本事業では現代アートの芸術祭を震災後解体による空店舗・空地が目立ついわき駅前商店街で開催し、そこに、いわき市に暮らす人々と気鋭の芸術家が同じ地平で参加することで多様な背景を持つ人々が互いの違いを理解・尊重し、安心して集える場を創ること、そしていわき駅前商店街の活性化と住民間の原発事故に起因する軋轢の緩和、ならびに地域文化の振興を図ることを目的とした。

活動の内容

津波被災者が暮らす市営の公営住宅と原発避難者が暮らす県営の公営住宅が隣接している下神白地区の方を対象に、アートの手法を用いた新たなコミュニティー形成を目指し「ちぎり絵屏風制作WS」を実施した。あわせて、WSの成果発表と、鑑賞者に「考えるきっかけ」となる場を作るために、いわきの地域資源や課題にコミットした芸術祭を、いわき駅前の低・未利用地や商店の一角を活用し、35日間にわたり開催した。芸術祭は、ちぎり絵屏風WS参加者にとって「大きなゴール」となるよう、そして鑑賞者に「見ること」をあらためて考えなおすきっかけとなるよう、気鋭の芸術家による現代美術を主とした展示や映画の上映、街歩きWSを、行政やアニメ制作会社、街中の商店や飲食店、文化芸術分野の他プロジェクトと密接に連携して開催した。
実施場所: WS・下神白復興公営住宅 芸術祭・いわき駅前商店街一円

参加作家、参加人数

チーム下神白団地withとっくん 岡本光博 疋田淳喜 君平 中屋敷智生 本郷毅史 青木勝洋 十中八九 藤城光 吉田重信 ナルコ 放課後のプレアデス製作委員会 『物置のピアノ』製作委員会 キッズゲルニカいわき+ひろしま
延べ観客数約4,200名

他機関との連携

福島県からコミュニティー交流事業を全面的に委託されている「みんぷく」と密接に連携。プロジェクト実施の際、一貫して住民との橋渡しをしていただき、欠かすことのできない存在であった。はま・なか・あいづ文化連携プロジェクトと連携し「岡部昌生フロッタージュプロジェクト成果展」を同時期・同会場で実施した。また、ちぎり絵屏風WSの前にコミュニティー事業を協力して実施していただいたことでスムーズに本事業に移行できた。福島ガイナックスと連携。アニメの力を活用し、アートを身近に感じさせることができた。福島藝術計画と連携することにより、「ちぎり絵屏風WS」の後のコミュニティー事業に繋げることができた。

活動の効果

本事業においては「著名な美術家や先鋭の若手美術家が多数参加し、街中を広く活用した芸術祭に出展する」という明確なゴールを作った。実際に制作された作品はいわき駅前の中核を担う商業施設である「Latov」へ展示され、鑑賞者からの客観的な評価を得られたことで、WSで制作を行った住民が大きな満足感を得られたことが確認できた。このカタルシスは協働で制作した者同士を地縁や血縁を越えて結びつけ、強い絆が生まれ、「仲間」という新たなコミュニティーが生まれた。

活動の独自性

多様な背景を持つ人々をアートによって、興味関心事や「手を動かすこと」で紡ぐプロジェクト。その「大きなゴール」としての芸術祭。そして、その両輪を回すことで、いわきの地域課題を共有し、志を一つにして多組織・多プロジェクト・作家が連携してプロジェクトを成功に導いたという点が、活動の独自性である。

総括

本事業の成功により、アートプロジェクトの持つ新たな可能性が引き出され、小さいながらも今後の日本のコミュニティーアートのモデルケースとなりうるのではないかと考える。本来、いわき市の独自課題に対応すべく本事業を実施したのだが、WS実施フィールド200世帯の大半が高齢者であり、うち40世帯が後期高齢者であったこともあり、事業を進める上で「超高齢化社会におけるアートの可能性」を考えさせられた。このテーマはより一般的であり、次年度以降も引き続き探っていきたい。

  • 下神白で実施した「ちぎり絵屏風WS」

  • 完成した作品は中核商業施設に展示された

  • 岡本光博[モレシャン morechand / Lj 5]