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アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ
ACOP瀬戸芸ワークショップPJ–地域とアートをつなぐコミュニケーション・ワークショップの実践–
京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター内『ACOP瀬戸芸ワークショップ PJ実行委員会』
- 実施期間
- 2016年4月1日~2017年3月4日
活動の目的
地域住民、異なる専門性を持つ学生たちが、ともに地域資源やアートを媒介とし、対話のなかで考え、学び合う「場」を創出すること。また、このようなコミュニケーションが促されることで、「地域」と「アート」の関係をより深めることができるのではないかという、一つの試みでもある。
活動の内容
4月より、数回に及ぶ豊島でのフィールドワークおよび勉強会を行い、ワークショップ<みんなで撮って話そう会 – 豊島を写すと、あなたも映る?! – >を開発した。プログラム内容は、「自分が思う『豊島らしい』風景を撮影し、グループで対話しながらお互いの写真を鑑賞し合う」という、いたってシンプルなもの。シミュレーションとブラッシュアップを繰り返し、8月にはプレイベントとして豊島の中学生たちを、9月の本番では地域住民の方々を対象にワークショップを実施した。同時に、参加者へのインタビュー調査・分析を行い、今回のプログラムの効果や今後の展開としてどのような可能性を内包しているかなどの点について検証し、報告書にまとめた。
実施場所:香川県小豆島土庄町 豊島唐櫃地区
ワークショップ実施日:2016年8月18日(プレ)、9月9日(本番)
参加作家、参加人数
【プロジェクトチーム】京都造形芸術大学11名(うち学生5名)、香川大学6名(うち学生4名)、外部研究協力者、現地コーディネーター/計19名
【プレ・ワークショップ参加者】豊島の中学生/計7名
【ワークショップ参加者】豊島の住民(移住者含む)5名、芸術祭運営側関係者3名/計8名
他機関との連携
専門性の異なる二つの大学および外部研究協力者、現地コーディネーターが共同することで、多角的かつ多層的な視点を有したプロジェクト進行が可能となった。
活動の効果
住民自らがあらためて「豊島らしさ」を考え、それを視覚化(写真)および言語化(対話)することで、人それぞれの「地域」や「アート」の姿が浮かび上がってきた。また、参加者同士の対話において、異なる視点や解釈の存在を認識し、それらを聴くことによって考えが変容していくことも促されたようだ。
調査分析のフェーズにおいても、今回のプログラムをきっかけに、豊島やアート作品について話したい、聴きたいという、コミュニケーションに対する意欲の高まりを読み取ることができた。
活動の独自性
これまで3回の瀬戸内国際芸術祭開催を経て、「今の豊島」について、住民自身がいま一度考えられる「場」であったこと。また、写真という媒体を通して各々の価値観や見方が立ち上がり、「地域」について「アート」について、「これまであらためて話すことがなかった」それぞれの考えや複数の異なるまなざしが交錯する対話が紡ぎ出されていたこと。
豊島で生まれ育った住民、移住者、芸術祭運営側関係者など、属性の異なる参加者たちと、「よそ者」であるプロジェクトメンバーが関わり合い、対話をしながら、前述のような「場」を創出できたことは、これまでにない新たな取り組みの成果の一つである。
総括
申請時の事業名にもあるとおり、「地域とアートをつなぐコミュニケーション・ワークショップ」として今回のプログラムは開発された。しかし、実際のワークショップを振り返ってみたときに、実は参加者によって撮影された写真の中に「アート作品」を真正面から扱ったものは1枚もなく、背景として作品が写っているものが2枚あるのみだった。 住民、さらには芸術祭主催側関係者を含めても、「豊島らしい風景」にアート作品がいまだ入り込んでいないということ。しかし、「そこに作品が写り込んでいない」ということをきっかけに、やはりアートについての考えが語られたということ。これは、豊島における「地域」と「アート」の関係を象徴的に示していたのかもしれない。
つまり、このワークショップは、「地域」と「アート」について参加者が対話しながら理解を深め、お互いの関係性を構築していくという効果がある一方、「地域」と「アート」の現状についてありのままの姿を描き出す、アクション・リサーチとしての機能も備えていたのだ。 今回の試みをふまえ、よりアート作品に対象を絞った鑑賞ワークショップ、別の地域での実践など、さらなる展開も可能ではないだろうか。
ワークショップ本番当日
ファシリテーター役の学生とペアになり写真を撮影
写真を見ながら自由に意見を交わす参加者