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アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
「障害者のアート」を中心とした既存の「アール・ブリュット」の文脈では取り上げられる機会の少ない地域在住の表現者たちを紹介することで、真の意味でさまざまな生き方や価値観が肯定され、誰もが生きやすい社会をつくることに貢献することが本事業の目的である。
活動の内容
①展覧会
・『極限芸術2~死刑囚は描く~』展 4/29(金祝)から8/29(月)
42名の確定死刑囚の表現を紹介した展覧会で、日本初となる確定死刑囚の作品集「極限芸術~死刑囚は描く~」も刊行した。
・『遅咲きレボリューション!』展 10/15(土)から1/29(日)
年齢を重ねながら活動を続ける「遅咲き」の表現者に焦点を当てた展覧会
②有識者によるトークイベントを開催
③現場訪問ツアー
表現者のもとを参加者と訪問し創作や生き様に関するインタビューを行う通常のツアーのほか、2日間にわたって備後地域の表現者たちを訪ねる拡大版のツアーも開催
実施場所:クシノテラスおよび地域社会
参加作家、参加人数
『極限芸術2~死刑囚は描く~』
【参加作家】林眞須美など42名
【トークイベント登壇者】都築響一、茂木健一郎
『遅咲きレボリューション!』
【参加作家】西本喜美子/マキエマキ/長恵/ダダカン(糸井貫二)
【トークイベント登壇者】西本喜美子、会田誠
他機関との連携
美術手帖や共同通信、実話ナックルズ、地元紙など多くの媒体で活動内容を紹介することができた。広島県が発行するガイドブックなどにも情報を掲載していただくことができた。
活動の効果
死刑囚の人たちが描いた絵画は、死刑囚の存在や死刑制度の是非について鑑賞者に考える機会を提供し、今夏には東京での展覧会が開催されることとなった。遅咲きの表現者たちを取り上げた『遅咲きレボリューション!』展では、出展者のひとり、88歳の自撮り写真家の西本喜美子さんが大きな注目を集め、以後さまざまなメディアで紹介されるきっかけとなった。この展覧会では、実際に地域在住の高齢者の来館が多かった。
活動の独自性
「障害者のアート」を中心に、社会の「周縁」で活動を続ける表現者たちを紹介する展覧会は増えてはきているが、いまだその存在に光が当たっていない人は多い。全国各地に足を運び、これまで注目されることのなかった表現者を展覧会や書籍、ウェブサイトなどさまざまな媒体で紹介することで、より多くの方にその存在を知っていただくことができた。さらに、展覧会だけではなく、表現者の制作現場を訪れる「現場訪問ツアー」を複数回開催したことで、その存在や生き様そのものにスポットが当たり、それが制作当事者の喜びやさらなる制作意欲の向上につながった。
総括
2020年に向けた我が国のアール・ブリュット施策は障害者福祉を中心に据えているため、性的な表現や反社会的な表現など、極度に福祉から逸脱した表現は決して取り上げられることはない。しかし、そのような表現の中にも芸術的価値の高いものは存在する。そこで、2016年4月にクシノテラスを設立し、そうした表現も含め多くの表現者を紹介することで、既存のアール・ブリュットの枠を拡張する作業を続けてきた。また、制作者のもとを参加者が訪問する「現場訪問ツアー」は、作品本来の魅力を堪能するだけではなく、従来の美術館のあり方を検討する機会になった。さらに、拡大版として開催した福山・尾道・府中の広島県東部備後地方を巡る2日間のバスツアー「ほいじんが&櫛野展正と行く『! びんごトリップトラベル』」では、奇祭や奇食なども含め従来の観光では取り上げられることのなかった新しい地域の魅力を多くの方に紹介することができた。こうした一連の取り組みの成果が、書籍「アウトサイドに生きている」(ダバブックス)の刊行につながった。
88歳の自撮り写真家・西本喜美子さん
日本初の死刑囚の絵画作品集を刊行
備後地域を巡るバスツアーを開催