アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

アートプロジェクトと地域をつなぐ地域コーディネーターとの協働に向けて2016-2017

ブレーカープロジェクト実行委員会

実施期間
2017年4月1日~2018年3月31日

活動の目的

都市部でありながら、住民の高齢化、過疎化が進むなど、さまざまな課題を抱え、新たなコミュニティーの形成が必要とされる地域において、現代のアーティストによる新たな表現活動を生み出し、空き家等を活用した創造活動拠点の創出や福祉や教育等との連携・協働を図り、住民自治による持続可能な地域づくりに寄与することを目的とする。

活動の内容

①廃校跡地にて地域に開かれた作業場をつくるプロジェクトを継続展開。美術家の他、建築家や造園家なども参画し、住民を交えた協働体制のしくみ構築に取り組んだ。
②西成区内の町工場等さまざまなものづくりの現場のリサーチをもとに展覧会「よりそうかたち」を開催。
③地域の女性たちとアーティストの共同制作によるファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」を立ち上げ、2会場で展覧会を開催。
④地域の団体との連携により「西成・子どもオーケストラ」のワークショップおよびパレードを実施。音楽を軸とした子どもの居場所づくりに向けて、地域への活動の周知と定着に取り組んだ。
⑤西成の観光スポットを歩きながら道端にひそむ魅力を「世界旅行的な」見立てで楽しもうという1泊2日のまち歩きツアーを実施。西成区住民も参加する交換観光も同時に開催。
実施場所:西成区山王・今宮を中心とした区内全域、大阪府立江之子島文化芸術創造センター(西区)

参加作家、参加人数

①きむらとしろうじんじん、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、坪田直、安藤聡[ WS参加人数]延べ756人
②青田真也[ リサーチ件数]64件 [来場者数]624人
③西尾美也[ WS参加人数]延べ939人 [来場者数]1117人
④三田村管打団[WS参加人数]延べ141人 [来場者数]761人
⑤伊達伸明[ 参加人数]40人

他機関との連携

■協働・連携先:今宮ふれあい地域活動協議会、今池こどもの家、いまみや小中一貫校、今宮工科高校、にしなりプレーパークプロジェクトなど ■広報の協力:西成区役所、飛田地区商店街連合、山王連合振興町会など

活動の効果

<作業場>や<たんす>における創造の場づくりの継続展開により、居場所として定着。多様な世代や層の人々がものづくりを介して出会い、新たなネットワークが生まれつつある。参加者である地域住民が、場/活動の担い手として、さらなる協働体制を構築する段階へと進んでいる。また、レジデンス事業では、区内の町工場などものづくりの現場のリサーチを通して地域に潜在する資源を掘り起こし、作品へと昇華させ、住民の新たな「発見」をもたらした。

活動の独自性

地域に根ざした先駆的で質の高い作品や活動を創出するため、アーティストが地域に入り、時間をかけて実験的な表現活動に取り組む環境づくりと、そのプロセスにおいて地域住民とさまざまな関わりを生み出していくマネジメント、日常の小さな活動を積み重ねていくプロジェクトであることが活動の特徴の一つである。また、地域に潜在する創造的人材の発掘と協働とともに、将来的には面的な広がりを想定した空き家や廃校跡等の創造的活用と継続のため、地域の福祉や教育、まちづくりといった活動団体等との連携を積極的に図り、新しい創造の場を地域と共につくる創造的社会実験に取り組んでいる点が独自性として挙げられる。

総括

<作業場>の参加者は、未就学児から80代まで多世代にわたることが大きな特徴である。その中でもコアメンバーの内訳は、10-20代および60代以上の地域住民と大学生~40代の地域外からの参加者が半数ずつとなっており、さまざまな世代・立場の人が混じり合う作業場は、新しい地域コミュニティーの可能性が見いだせると考えている。開館から6年目となる<たんす>では、アーティストと地域の女性たちの共同作業によるファッションブランドを立ち上げた。次年度以降、大阪市の文化事業ではなく、地域の創造の場として独立して活動する基礎を構築できたが、運営面での基盤整備は今後の課題として残る。<西成・子どもオーケストラ>は、WSや地域活動との共催で実施したパレードで新たな参加者も増え、地域内での認知度も上がってきた。今後は「音の場」づくりに向けて、地域とのさらなる連携の強化を図ると同時に、行政との調整も必要である。青田、伊達のプロジェクトでは、見過ごされがちな場所や潜在する記憶、資源を再発見し、展覧会やまち歩きを通して地域内外の参加/来場者と共有することができた。両プロジェクトともに西成区全域にリサーチが広がり、新たなつながりを生み出すことができた。

  • 作業場@旧今宮小学校

  • 青田真也「よりそうかたち」展覧会場風景

  • NISHINARI YOSHIO ワークショップ風景