アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

原泉アートデイズ!2022

原泉アートプロジェクト

実施期間
2022年4月1日~3月31日

活動の目的

1 2018年から実施してきた、原泉アーティスト・イン・レジデンス(以下、HARAIZUMI AIR)の認知度向上。
2 2017年より活用している旧原泉第2製茶工場を拠点とし、地域に根ざした恒常的なアート活動を推進すること。
3 来場者の増加を図り、地域内外への新たな人の流れの循環の創出に貢献し、アートストアの活性化により更なる自主財源獲得等につなげる。
4 国際的なネットワーク強化を視野に入れた海外との関係構築を行うこと。
5 以上の目的を達成することにより、地域コミュニティでのアート活動をより一層日常化させる。

活動の内容

●展覧会期間:2022年10月13日(木)~11月27日(日)(月・火・水休業)
●HARAIZUMI AIR実施中のプログラム開催。
1 レジデンスプログラム:アーティスト滞在中の毎日の共食内容を記録し、地域資源とアーティストの暮らしとの結びつきを可視化。(HARAIZUMI AIR MEALS)
2 オープンスタジオプログラム:滞在中のアーティストトークを実施。原泉での唯一無二の制作体験を地域内外に発信。
3 企業連携プログラム:地元企業の協力を得、地域内のキャンプ場の遊休施設を活用した宿泊型展覧会「HARAIZUMI ART CAMP」を、滞在中のアーティストと連携して実施。スイス発自転車メーカー『BRUNO』とコラボ2年目。来場者が自然とアートを体験できる機会を提供。
●旧原泉第2製茶工場の積極的利用。その他、展覧会時には地域内の約9ヶ所の遊休施設を活用。
●国際交流プログラムとして、長期的な中国との連携構築を見据えた中国人アーティストの受け入れを行った。

参加作家、参加人数

アーティスト/3カ国14組(日本・米国・中国)/中瀬千恵子、野々上聡人、ソノノチ、Robin Owings、安藝悟、井口貴夫、ミナミリョウヘイ、弓塲勇作、松島家(誠・礼・花)、西村卓、和田峻成、楡木令子、高飛、庄然
【5周年記念講演会】
講師/福住廉氏 ファシリテーター/櫛野展正(アーツカウンシルしずおか) 来場者/2,500名

他機関との連携

協力/原泉地区まちづくり協議会、資生堂企業資料館、資生堂アートハウス、農事組合法人 原泉茶業組合、オルタナティブスクール実りの泉、さくら咲く学校、昌光寺、FUNNY FARM、GAMA coffee、omedarida、eatful life
協賛/しばちゃんランチマーケット、掛川市森林組合、有限会社 佐藤工務店、株式会社森の都ならここ、近藤歯科クリニック、BRUNObike、POWAPOWA
支援/アーツカウンシルしずおか

活動の効果

掛川市都市政策課協力の下、掛川バスサービス(株)が掛川駅発の路線バスを会期中週末限定で増便した。5年目開催であることによる事業への期待と、バス利用活性化の可能性を見出しての実現となった。減便の一途を辿る中山間地域の公共交通手段の充実は、事業による地域づくりが地域行政からも認知されてきているという評価の指標として捉えている。今後複数年かけて利用を周知していくよう行政と協力し計画を立てていく予定だ。

活動の独自性

当事業は、HARAIZUMI AIRの一環で成果発表の場としての位置付けで開催している。毎年春から秋にかけて参加アーティスト達が一定期間以上滞在、地域コミュニティと交流しながら制作に臨む。制作する日常に焦点を置き、特にアーティスト達の原泉での暮らしを形作る毎日の食卓を囲む共食プログラム、HARAIZUMI AIR MEALSが特徴。アーティスト同士、サポーター、時には地域の方も交え、食卓の場で日々の情報や何気ないアイディアの交換、信頼関係の構築を行う。地域からの差し入れなどを使って調理された料理を食し、食材を通してアーティストが土地とつながり、身体的に地域と交わって、作品制作の糧を得ている。今後は、大学と連携し心理学の視点から調査研究を行うチームで、日々の食文化から地域とのつながり、制作への好影響などをリサーチ予定。

総括

当事業は、2018年より開催を続け、5周年を迎えた。祝祭的な華々しさよりも、地域の中で日常となりつつある、アーティスト達の制作風景をどのように持続させるかについて検証し実験していくことが活動の軸となっている。2022年度は、節目にあたり、今後私たちが何を目指し、どのようなプロセスを生み出していくべきか、改めて振り返る年となった。5周年記念講演会の開催では、『現代美術の民俗学的転回』というテーマで美術評論家の福住廉氏に基調講演いただいた。多様なステークホルダーと共に聴講し、当事業を客観的な視点から観察することができた。アニバーサリーブック制作では、5年分の作品アーカイブ、関係者同士のネットワークの再構築、そして当事業の成り立ちや思いを外部発信することなどの成果につながった。また、全ての地域関係者に献本還元し、これまでの感謝と敬意の気持ちを伝えることができた。
今後は、展覧会である当事業とHARAIZUMI AIRの特異性を強化すると共に、地域全体でアートのある日常が開放されている場づくり(HARAIZUMI ART PARK化構想)を目指して、プロジェクトコミュニティの拡充、海外ネットワークの強化、年間を通した拠点開放と発信に取り組む。

  • 5周年記念講演会(講師:福住廉氏)の様子

  • AIR 期間中のアーティストトーク(ソノノチ)

  • HARAIZUMI AIR MEALSの展示の様子