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- 白老文化芸術共創 – ROOTS & ARTS SHIRAOI – 2022
アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
2022年度は、以下団体の活動目的のうち、取り分け「2」「5」「6」を目的とする
1 地域資源、ひと、暮らし、風土、地勢、土地の記憶に光をあてる
2 新しい観点・手法・発信力を用い多様な価値観と創造性の理解伝達に努める
3 人と人・地域との絆、コミュニティ復興の契機となる
4 地域振興と経済活性、福祉教育の振興へ貢献する
5 住民と第三者が協働し地域の価値を「再発見、再編集、再構築」する機会の創出
6 住民の活力の創出、居場所や仲間づくり、人材育成(当事者・主体性意識向上)に努める
7 世界の多様性を尊重し、「共生の方法」を考える動機となり続ける
8 実績・ノウハウを積み重ね、次世代の未来へ継承する
9 文化観光による地域活性化の潜在的な力を住民、周辺地域と共有する
活動の内容
1 ROOTS&ARTS作品展→各アーティストがフィールドワークによって地域文化資源〔=ROOTS〕や住民に出逢い、多種多様な創作表現〔=ARTS〕によって作品を制作・発表。
2 ウポポイ企画協働プログラム→多様性の尊重、多文化理解をテーマ軸にイヌイット等の北方圏、アイヌに限らない他地域先住民族の伝統技術を現在の創造性と掛け合わせ、町内複数会場で展示。
3 パフォーミングアーツ→国内外で高い実績のある先鋭的人形劇団「おたのしみ劇場ガウチョス」による地域滞在と発表。
4 ナイトプログラム→廃止された燈台や学校にて、光のプログラムを実施し、新しい「スポット」を生み出した。
5 アースワーク住民共創→町民連携プロジェクトを実施。地域住民・地元企業と連携したウッドデッキテラスや、白老川から採取した粘土を使用し、町民と一緒に土面を制作・展示。
6 音声プログラム「ラジオウタリ」→アイヌ音楽をはじめ、世界各地の伝承、音が生まれた背景やカルチャーなどを紹介。
参加作家、参加人数
参加作家/青木陵子、伊藤存、鈴木ヒラク、梅田哲也、是恒さくら、吉田卓矢、香川軍男、曽我英子、四辻藍美、おたのしみ劇場ガウチョス、大黒淳一、石川大峰、iruinai、森と街のがっこう、野生の学舎
作品協働制作には住民他約200名、ワークショップ約50名、初のアートBUSツアーに約20名参加。来場者は約5000人。
他機関との連携
公益財団法人アイヌ民族文化財団/白老町/白老町教育委員会/一般社団法人白老観光協会/白老町商工会/協同組合白老商業振興/苫小牧民報社/北海道新聞苫小牧支社/一般社団法人白老アイヌ協会/飛生アートコミュニティー/ウイマム文化芸術実行委員会 等
活動の効果
参加作家のリサーチ同行、会場受付のほか、作品の協働制作など、様々な場面で町民と文化芸術との接点や参画機会を創出。会期中は来場者に観光地ではない、生活圏を含む土地の魅力を発信できたと同時に、交流人口拡大が図られた。回遊・移動を促すことで自然景観や食をはじめ生活文化や国立施設とは違った土地に根付くアイヌ文化を感じ得る体感の提供ができた。アートを介した他者や町民同士とのコミュニケーション、多様な価値観への理解促進の場面が多分に産まれた。
活動の独自性
●町の回遊:町の商店街を中心に東西25kmの小集落地にも作品スポットを点在させた。ウポポイと温泉地が一般的な観光場所であるが、立ち寄る機会の少ない場を展覧会場とすることで、来場者の町内回遊を促し、知られざる町の魅力や生活文化に触れる機会を創出。
●文化発信スポットの創出:ギャラリーやオルタナティブ空間がほとんど無い小地域にて、空き倉庫や工場跡、廃止の燈台、神社境内や廃校の校庭などを創造・発表の場、人々が立ち寄る発信の場として創造。
●地域固有の物語の作品化:レジデンスに創作人形劇団が参加。地域散策や文献調査、町民への聞き取りと交流、アイヌ伝統技法を学ぶ活動などを経て、地域に残る伝承の物語を人形劇として発表。多くの園を巡り、幼児や親子が文化芸術に触れる機会を数多く創出。
総括
参加作家、会場数、会期などの規模感、住民スタッフの参加や各実施内容を含め、多くの「初実践」があり、いずれも21年度を大きく上回る規模となった。
作家滞在リサーチや制作過程では地域の素材や資源を発掘する作業による再発見の共感や、作家と地域との結びつきが生まれた。文化芸術に触れる機会として、障がい者施設や子育て世代層、地元陶芸家などとの共創の他、アイヌ文化伝承者、水産加工業、大工や木材加工場、図書館やスーパー、飲食店などで数多く生まれた協働は、個々の立場・世代・思想や生活背景を超えた多様な価値観を享受し合えるアートの有効性、多様性を目指す地域振興の可能性を示すことができたのではないか。札幌発着のバスツアーはウポポイによらない初プランであったが、地域生活圏を歩き巡る内容などで好評を得た。
22年度は未だコロナ禍の中であったが地元文化活動2団体の実施プログラムと会期を合わせる相互協力により参加者の回遊性を高められた。一方で運営面では準備不足や制作進行の遅延、スタッフの疲弊などが起きた。22年度に町や人々に生じたポジティブな空気感や流れを活かしつつも、健全性を担保できる運営計画が必要である。
行政職員と地域住民の共創が図られた光のプログラム
就労支援施設と協働の作品制作、個性感性が爆発
会場に呼び込まず、小地域に出向く人形劇舞台