活動レポート

2023年7月30日アート助成

Vol.17 クロスプレイ東松山(医療法人社団保順会)活動紹介

■医療法人社団保順会 事業について
医療法人社団保順会と一般社団法人ベンチでの共同プロジェクト「クロスプレイ東松山」を2022年に開始。埼玉県東松山市内の高齢者福祉施設に宿泊・創作できる常設のアーティスト・イン・レジデンス機能を設置。アーティストによるリサーチやワークショップ、作品制作を通じ、施設を利用する高齢者や職員と中長期にわたり文化的な交流を重ねていきます。また地域の人・団体と連携し、有機的なネットワーク構築にも取り組んでいます。 

アサダワタル氏による「楽らくラジオ」




■活動紹介
作品づくり等を依頼する「アソシエイトアーティスト」と、施設の特徴を活かして自由に滞在してもらう「公募アーティスト」(毎年度ごとに募集)の2種類の枠組みで、アーティストを招いています。 
福祉施設でのアート活動は、レクリエーションの時間を使って、アーティストが活動を提供するという構造が主流でした。しかし本プロジェクトでは、ケアの現場にアーティストが滞在することにより、同じ場所にいる利用者や介護職員の時間と、アーティストの時間が交わります。レクリエーション以外にも、例えば利用者の空き時間にアーティストがリサーチをしたり、アーティストのクリエーションを利用者が見学したりするなど、アーティストが施設で「すごす」ことを大事にすることで、双方向の対等なコミュニケーションが生まれることを目指しています。 
施設内でアーティストによってさまざまなプログラムが生まれています。一例としては、以下の通りです。 
・「楽らくラジオ」…施設内だけで流れる架空のラジオ番組をオープン。思い出の曲をリクエストしてもらい、その曲にまつわるエピソードを聞く。 
・写真展「Love letter to… わたしの記憶のたからもの」思い出の写真を利用者から募集し、その写真のエピソードとともに、写真パネル化。デイサービス楽らくと、東松山市内のギャラリーで巡回展を行う。 
・舞台「どこ吹く風のあなた、ここに吹く風のまにまに」…デイサービス楽らくの1日を切り取った舞台作品を、デイサービス楽らくと東松山市民文化センターの2箇所で上演。有志の利用者や職員も出演。 
「福祉施設であり文化施設でもある場所」をコンセプトにプロジェクトを行なっていますが、福祉の視点から目指すことと、アートの視点から目指すことは、必ずしも同じではありません。ですがどちら一方がもう一方を利用する関係ではなく、違いを意識して互いの価値観を尊重し合いつつ、創造過程を共に楽しむ瞬間が生まれることにこそ、本質的な意義があると考えており、紆余曲折はありつつも、目下のところは良い形での「クロス」が成し遂げられていると感じています。 
課題としては、プロジェクトの中で生まれるさまざまな価値観をいかに言語化できるかということ、この取り組みが特殊ケースとならず、どのように他の福祉施設等に向けて開いていけるかということです。

公募アーティスト・桂融氏のアートプロジェクト「東松山で航海するの?!」







■今後の展開
2023年度は引き続き、滞在アーティストを広く公募し滞在いただくほか、前年度から継続して携わるアーティスト・アサダワタル氏による音楽プロジェクトを実施予定です。デイサービス楽らくを拠点としつつ、近隣の小学校等とも連携し、地域に開かれたプロジェクトを計画しています。また活動成果の言語化にも努め、福祉・芸術文化関係者等に向けた意見交換会の実施や報告書での情報発信を予定しています。 

白神ももこ氏の舞台公演「どこ吹く風のあなた、ここに吹く風のまにまに」


 

(医療法人社団 保順会/一般社団法人 ベンチ 藤原顕太)

■クロスプレイ東松山 
 HP:https://bench-p.com/projects/crossplay-higashimatsuyama/