アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

「表現未満、」アートミックス2021

特定非営利活動法人クリエイティブサポートレッツ

実施期間
2021年4月1日~2022年3月31日

活動の目的

静岡県浜松市の中心市街地の様相は、コロナ禍によって一変した。また、社会的弱者の居場所や市民が行う文化事業の中止、廃止が続出している。中心街にある松菱百貨店は戦後復興の象徴として市民に愛されていたが、リーマンショック後、更地状態が続いている。本事業では街のステークホルダーと協働し松菱百貨店跡地で「オン・ライン・クロスロード」を開催し、同時に、「表現未満、」プロジェクト(文化祭、公募型音楽・パフォーマンス祭典、観光ツアー、哲学カフェなど)を街の各所で実施することで、市民に発表の機会を提供するとともに、障害、ジェンダー、人権などの社会包摂の場をアートによって創り出し、コロナ禍の街の新しいあり様を提示する。

活動の内容

1 「オン・ライン・クロスロード」の実施
1400坪の空き地(松菱百貨店跡地)をクロスできる道をつくり、アーティストとともに市民が遊び、表現できる場を創出した。(11月3日~7日、舞台、演劇、パフォーマンス、トーク、ワークショップ、マルシェなど)
2 「表現未満、」の波及
「表現未満、」なパフォーマンスを集めた「スタ☆タン‼全国ツアー」を8か所(新潟、福島、長野、浜松、愛媛、五島列島、宮崎、沖縄)で実施した。また、街の文化創造発信拠点を目指して、たけし文化センター連尺町で本格的な音楽パフォーマンス(クラブ・アルス、玄関ライブ、エアロビックなど)を実施した。
3 「浜松ちまた会議」の発足
新しい街のあり方を模索する会議がスタート。

参加作家、参加人数

オン・ライン・クロスロード/開催期間5日間 延参加者数5,000人 
監修/中崎透 20団体 
雑多な音楽の祭典~スタ☆タン‼/全国8か所70組参加
表現未満、クロストーク/
研究者5名(1名アメリカ)長津結一郎、若林朋子、中村美帆、ジャスティン・ジェスティ、山本浩貴
クラブ・アルス/
開催3回・配信6回Motomitsu、横山雄輝、岸野雄一、珍盤亭娯楽師匠、クボタ タケシ 
玄関ライブ/毎月1回12回、120団体、延500名 他

他機関との連携

文化庁、アーツカウンシルしずおか、浜松商店界連盟、浜松まちなかにぎわい協議会、アサヒコーポレーション、PPPデザイン、新潟県アール・ブリュット・サポート・センターNASC、松山ブンカ・ラボ、若狭公民館、アーツカウンシルみやざき、ぶっとびアート、そこをなんか、BaRaKa

活動の効果

20年間、浜松の衰退の象徴となっていた松菱百貨店跡地を開き、開催した「オン・ライン・クロスロード」は、物販でもイベントでもない、アートによる「場」を開いたことで、産業だけが賑わいにつながるのではなく、人が集って賑わいができることを明確に示すことができた。これによって街の新しいあり方を街のステークホルダーがともに考える機会(浜松ちまた会議)が生まれた。
「表現未満、」のパフォーマンスを集める「スタ☆タン‼」全国ツアーは全国8か所で開催され、「表現未満、」の視点を各地域の人々に広めることができた。

活動の独自性

中心市街地に拠点を持ち、障害福祉施設を運営する当法人が中心となって、アートによって街のあり様を変えていく試みに着手したこと。2016年から提唱している「表現未満、」をベースとした場をつくることで、作品だけではないアートのあり様を示すことができるのは当法人の強みである。また、衰退のシンボルであった松菱百貨店跡地でイベントを行うことの意義は大きかった。さらに今後もこの事業を通して街づくりを積極的に進めていく。
全国展開を試みた「スタ☆タン‼」は、取るに足らないと思われる行為を表現と位置付けて皆で愛でる試みとして広がっている。

総括

●アートで街を変える~「表現未満、」の展開
2021年は、コロナ禍を迎え、衰退する中心市街地をアートの力で再生する試みとして「オン・ライン・クロスロード」を行った。これはアーティストに参画いただきながら「表現未満、」をベースとして様々な催しをちりばめ仕立て上げた。
20年間、開かずの空間として浜松の衰退の象徴となっていた松菱百貨店跡地を開き、ここに物販でもイベントでもないアートによる「場」を開いたことは大きな反響を呼び、次年度以降も期待されている。また、産業では決して開くことができなかった場を、アートが開いたことは産業だけが賑わいをつくるのではなく、人が集って賑わいができることを明確に示せたことは、大きな成果でありこの街の状況を変えるきっかけとなった。
●街の文化創造発信拠点
コロナ禍によって失われた表現の場を、1年間本事業によって整備し、開き続けたことは、社会に志があれば文化事業継続は可能であることを示すことができた。さらに重度知的障害者施設が街の文化創造発信拠点となり得ることを示すとともに、さらに街づくりの中核としての認知を高めることができたのも大きな成果であった。

  • 「オン・ライン・クロスロード」会場風景

  • 「スタ☆タン!! Z in 松山」の様子

  • 子供も参加するクラブ・アルスの会場風景