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アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ
活動の目的
2021年は東日本大震災、そして東京電力福島第一原子力発電所事故から10年を迎える年だった。そして2015年に発足した「Don't Follow the Wind」(以下DFWと略)は活動から6年がたつ。
2021年度のDFWは、忘れられがちな現地の様子や人々の記憶を風化させず、より広く伝えること、そして現地の状況やDFWの活動のアーカイブの充実を図ることを活動の目的とした。
活動の内容
1 DFWの活動をまとめた英語版書籍の出版と映像の制作・公開を行った
2 現地の人々とのオンラインでの交流、リサーチを継続した。また、帰還困難区域内での動物の生態を調べるための準備も開始
3 会場の一つを公開し、展示を体験するツアーを予定していたが、新型コロナの影響もあり実施を見送った。その代わり現場の下見と今後の実施計画に向けての協議を続けた
4 展覧会会場とその周辺の10年の変化や動きをまとめたアーカイブ資料の制作(継続中)
参加作家、参加人数
参加作家/Chim↑Pom、竹内公太、小泉明郎、Ahmet Ögut、グランギニョル未来
参加人数/約50人
他機関との連携
MOCAF http://www.mocaf.art/
2021年3月11日14時46分、福島県の富岡町に誕生したミュージアムであるMOCAFと、2022年3月11日の開館日に向けて情報交換などで連携した。
活動の効果
2021年度は、前年春より避難指示区域の一部で立入規制が緩和され自由に立ち入りできるようになったことを受けて、作品設置会場の一つを公開する予定だった。しかしながら、新型コロナウイルス流行に伴う人流抑制の社会情勢を鑑み、人を多く集め移動させるイベントを見送った。代わりに英語版書籍の刊行やビデオ制作を行った。世界中がコロナの影響で活動を自粛・制限する中、書籍と映像(e-fluxウェブサイトにて公開)を発表、またオックスフォード大学オンライントークイベント(TORCH)で動画発信し、リアルな体験ではない方法で広く伝えることに成功したと考える。
活動の独自性
このプロジェクトの最大の特徴は、活動自体は継続しているのに、帰還困難区域が解除され人々が戻って生活できる状態になるまで人々は展示を見に行くことができない、という点である。また地元住民はじめ協力者のプライバシーと意向を尊重し、その場所や交流について積極的には表に出していない。
DFWの活動を知ることができるのは、ノンビジターセンターと称した避難区域外の展覧会や出版物などによってのみである。
立ち入り制限が解除される時を待ちながら、過去から現在までの状況を想像する、その時間こそが、他のプロジェクトでは見られないこのプロジェクトの最大の特徴であり独自性である。
新型コロナウイルスの流行で世界的に相互隔離がなされた時期にあって、原発事故による避難区域という「以前から既に隔離されていた地域」での活動とその発信の重要性が図らずも顕わになったと言える。
総括
2020年から始まった新型コロナウイルスの蔓延は世界中の人々の生活様式を変えてしまった。
けれども予期せぬことで生活が変わって苦しんできた、そして今も苦しむ人々と共にプロジェクトを進めてきたDFWは、その状況をよく理解している。
2021年度に予定していた一部会場の公開は残念ながら開催することが叶なわなかったが、その間にDFWはその準備のために十分な時間を作ることができた。また海外へ発信も続けたことで、国外へのアプローチもしっかりできた。
2022年は、ここまでの準備を活かしスピーディな動きで、秋公開予定の展覧会開催と告知準備を進めていく予定だ。
ただDFWでは、協力してくださっている元住民の方、そして現住民の方々の現在の気持ちと今後の意向を聴くことをこのプロジェクトの中で最も重要なことの一つと考えている。意見には一つの答えがあるわけではなく、人の数だけ想いがあるということを大前提に活動を続けている。
だからこそこの指針を見失うことなく2022年度も活動を丁寧に続けていきたいと思っている。
書籍「Don’t Follow the Wind 」書影
e-flux ウェブサイトのキャプチャ
TORCH でのオンライントーク