アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

鎌倉 〇〇 アカデミア( かまくら まるまる アカデミア)

ルートカルチャ―

実施期間
2021年4月1日~2022年3月31日

活動の目的

地域に存在する「自然/文化」「新/古」「老/若」などの差異の狭間に架け橋を渡し、多様性を包みこむ文化的プラットフォームを作ること。
具体的には(1)文化的「土壌」を知る:地域の文化的資源を掘り下げ、ローカル同士の交流や対話を行う (2)実際の「土壌」を育てる:人が幸福に生きるために必要不可欠な野菜やハーブを育てるための健全な土作りと栽培を行いながら、人と自然のより良い関係性を育む文化的実践を行う (3)種を蒔く:地域内外の団体やアーティストと交流しながら、自分たちの活動から生まれたモノを拡げて行く という方法の有効性を検証すること。

活動の内容

R&Dと交流の拠点としてR∞∞T Lab.を開設し、オープンラボ・ワークショップ・トークイベント等を開催。
1 「隣人に聞いてみたい23の質問」(以下「23Q」/地域に住む老若男女へのインタビュー動画企画(YouTube)。
2 プレシャスプラスチック鎌倉/地域内で出たプラスチックごみの地域内循環を目指すプロジェクト。2名のプロダクトデザイナーと協働し、廃プラスチックを用いてプロダクト開発し、成果発表と他団体との情報交換。
3 R&Dの成果として、植物や発酵食品の生体電位から音楽を生成するデバイス「NOW HEAR MACHINE」開発、デバイスを用いた作品制作、デバイスづくりのためのワークショップ開催。
4 成果のアウトリーチ
Apple Phonics、パペットワークショップ、R∞∞T Lab the Movie、ART & OBJECT MARKET、ココ絶対世界など地域内外において、R∞∞T Lab.の活動成果を発表。

参加作家、参加人数

参加作家(順不同)/テリー・ライリー、有山葉子(Yo-yo.)、上田麻希、Shu Kojima、ヨシハラケイタ、伊藤桂司、Yah-ya、Yada、三浦秀彦、大友敏弘、勝見淳平、マイケル・フランク、瀬藤康嗣
参加人数/オープンラボ参加200名、ワークショップ参加100名、上映会参加30名、アウトリーチイベント参加者約1,000名、YouTube動画再生回数(21年4月~22年5月)/約45,000回

他機関との連携

FabLab Kamakura、鎌倉市政策創造課、株式会社エンジョイハウス、面白法人カヤック、ゴミフェス532、田中浩也(慶應義塾大学)、鎌倉FM、タウンニュース鎌倉版。
竹鳥(鎌倉)、株式会社純粋(逗子)、GRGR Gallery(伊豆)、たべるとくらしの研究所(福島/北海道)

活動の効果

動画企画「23Q」は朝日新聞で紹介され、プレシャスプラスチック鎌倉も、多くのコラボレーターを巻き込みながら活動を展開した。
R∞∞T Lab.でのR&Dから作られた「NOW HEAR MACHINE」は、テリー・ライリー氏らが音楽制作に取り入れるなど広がりを見せ、関連のワークショップと作品展示が青森、福島、山梨、東京で予定されている。他にも、参加型のパペットづくりワークショップがきっかけとなり「Puppet Disco」というプロジェクトが生まれた。

活動の独自性

作品制作の観点:「NOW HEAR MACHINE」と野菜・盆栽・発酵食品そのものをインターフェイスとして用いた、電子楽器やスピーカー、りんごの樹木自体が楽器/ヘッドフォンとなる「Apple Phone」のようなユニークな作品を制作した。現在多くの企画への招聘が予定されているのは、その独自性への評価のあらわれである。
プラットフォームの観点:地域外から著名なアーティストを招聘して活動を行う芸術祭が多いのに対し、私達の活動は、自分たちが中心となって地域内外のアーティスト/クリエイターを巻き込みながら「一緒につくるコミュニティ」の形成を志向しており、他に類例を見ない独自の活動であると自負している。

総括

「プレシャスプラスチック鎌倉」の活動は、海洋プラスチックゴミ問題・循環型社会の実現という、地域内外で多くの人が関心ある課題解決に関わるため、活動を通じて多くの団体やクリエイターとの交流が生まれた。22年春からは、慶應義塾大学「デジタル駆動超資源循環参加型社会」(プロジェクトリーダー:田中浩也教授)のサテライト研究拠点が鎌倉で活動を開始し、私たちもこの研究活動に微力ながら協力する予定である。
「NOW HEAR MACHINE」はアーティストだけでなく、料理研究家や園芸家らにも驚きと喜びをもって受け入れられている。このデバイスは、基本的に販売は行わずDIYで制作するワークショップを通じて拡げており、これが私たちの活動のコミュニティ形成に一役買っている。世界的な音楽家テリー・ライリー氏との関係もこのデバイスが縁となって出来たものであり、氏とのこれからのコラボレーションにおいても重要な役割を果たすこととなる。
このように、今後に繋がる活動の「土壌」育成と「種まき」をすることができた、充実の1年であった。

  • 隣人に聞いてみたい23の質問

  • テリー・ライリー氏と共に音楽とパン作り

  • プレシャスプラスチック鎌倉トークイベント