アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

イミグレーション・ミュージアム・東京 多国籍美術展「 わたしたちはみえている ー日本に暮らす海外ルーツの人びとー」

特定非営利活動法人音まち計画

実施期間
2021年4月1日~2022年3月31日

活動の目的

美術家の岩井成昭が主宰する「イミグレーション・ミュージアム・東京」(通称:IMM東京)は、2011年から地域に居住する海外ルーツの方々との交流を通して企画されるアートプロジェクト。地域に暮らす彼/彼女たちの生活様式や文化背景を紹介するとともに、それが日常の中で変容していく諸相を「適応」「保持」「融合」という3つのキーワードから探る。これまでの活動の蓄積をもとに、足立区という多国籍化の進む都心地域から「多文化社会」を多角的に問い直すとともに、本プロジェクトを通して、多文化社会を「知り」、多文化社会を「考え」、多文化社会に「参画」していくプラットフォームとしていくことで、足立区の多文化化について考えていく第一歩となることを目指す。

活動の内容

多国籍化の進む足立区から、海外ルーツの人びとに着目した展覧会を開催(2021年12月11日~26日)。多文化社会を知り、考え、参画していくプラットフォームとして、多文化社会をテーマとした①ゲスト&ホストアーティストの展示、②日本に暮らす海外にルーツを持つ方々の公募展、③アートを積極的に取り入れる多文化共生に取り組む国内の活動団体の紹介を行った。また、展覧会に合わせて、区内の小学校4校を対象に多文化社会の現状に気づき、理解を深めるアートワークショップや展覧会会場に展示された作品を扱った対話型鑑賞ツアーを実施。トークイベントも4つ開催。また、市民チーム「IMMねいばーず」とともにリサーチや勉強会なども通年で実施した。展覧会の会場では、リサーチから食をテーマとした来場者が思い出の味を交換しあう「多文化リサーチプロジェクト」を企画した。

参加作家、参加人数

本企画には主宰である岩井成昭(美術家)を筆頭にゲストアーティストとして岩根愛(写真家)、高山明(アーティスト・演出家)、李晶玉(美術家)が参加。そのほか、合計84名、14団体が関わった。また展覧会やトーク、アウトリーチプログラムなど合わせて延べ2,205名の方が参加・来場した。

他機関との連携

足立区シティプロモーション課/アウトリーチ校への打診協力及び広報協力。アーツカウンシル東京/広報、運営協力。

活動の効果

複数の新聞社や芸術関連の媒体、美術批評家、多文化社会に関心を持つ個人や団体のSNS等で反響が広がり多くの方々が来場した。また、「あだち広報」にも掲載され、会場周辺にお住まいの地域の方々や小学生、海外ルーツを持つ方々へアプローチでき、日本が抱える「内なる国際化」の現状を知ってもらう機会となった。

活動の独自性

日本社会が抱える喫緊の課題として多文化社会をテーマとした活動や展覧会は近年増えているものの、それらをつなぐプラットフォームはあまり見られない。また海外にルーツを持つ方々の作品公募展も東京都小金井市など自治体等がその行政区域の住民を対象としたものはあるが、国内全域を対象としたものは見られない。本展は、それらをつなぐプラットフォームとして企画されている。

総括

会期中、「アウトリーチ&鑑賞ツアープログラム」に参加した子どもたちが学校帰りに立ち寄り、作品を前に語り合う様子が頻繁に見られた。本展が作品発表の場としての意味だけでなく、子どもたちが自主的に会場に足を運び、海外ルーツの方々の生活や思いを遊びながら学ぶ場として機能したことは、未来につながる重要な成果のひとつであった。また、実施後に行った各校の担任教諭へのヒアリングでは「アートなどを通して世界中の人と交流し親睦を深めるというのは、国際理解において重要なことであると再認識しました」、「今回の対話鑑賞の体験を通じて、より生徒たちのことを知ることができ、成長した姿をみられて誇らしい気持ちです」という意見が得られ、今後の多文化社会を考えていく際に、教育機関の方々に影響があったことは次の展開へと繋がる兆しとなる。

  • 北千住BUoY3F公募展の様子  写真:冨田了平

  • 李晶玉氏の作品で対話型鑑賞している様子

  • Sepideh Hashemi講師のワークショップ