アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

さどの島銀河芸術祭推進プロジェクト

さどの島銀河芸術祭実行委員会

実施期間
2019年4月1日~2020 年 3 月 31 日

活動の目的

2021年の本祭開催を見据え、地域の人々との交流を促進し、プロジェクトの理解を浸透させ、地域の民俗・文化資源を発掘する目的でリサーチを行う。またアーティスト・イン・レジデンスを行うことで展示の拡張を目指し、イベントやツアー・シンポジウムなど多角的なアプローチで独自の国際芸術祭に育てるのが目的。

活動の内容

「さどの島銀河芸術祭2021」開催へ向けたプロジェクトを実施した。
(1)リサーチ・プロジェクト:佐渡島内に多く残る民話や民俗文化、佐渡ジオパーク、ジアス(GIAHS:世界農業遺産)等を大学関係機関等と協動で芸術の視点で研究リサーチした。
(2)作品制作プロジェクト:国内外からアーティストを招聘し、当芸術祭のシンボルとなる作品を地域住民と協働で制作した。
(3)展示プロジェクト:インタラクティブ性を持ち、リアルな映像で宇宙を体感できるアートプラネタリウムや加茂湖の船小屋に作品を展示。
(4)アール・ブリュット展:全国障害者芸術・文化祭にいがた大会とタイアップし、障がいのある方と健常者とのより良い共生社会の推進を図った。
(5)市民プロジェクト:パフォーマンスアートの新作の披露を目指し、インバウンドや訪れる人の増加を図った。
(6)大学連携プロジェクト:東京学芸大学等と連携し、リサーチ・作品制作・展示を行なった。
(7)佐渡アート・ツアープロジェクト:「もうひとつの佐渡観光」と題し、佐渡島内に多く残る民話や民俗文化、佐渡ジオパーク、ジアス(GIAHS:世界農業遺産)等を芸術の視点で巡るツアー。
(8)シンポジウム・講演会:美術批評家や参加作家、実行委員会によって、佐渡の民俗学を芸術的視点から地域住民や市民と一緒に学び考え、今後の芸術祭のあり方について探った。

参加作家、参加人数

参加作家:イーサン・エステス(米国)、テリー・ライリー(米国)、宇佐美雅浩(日本)、ホンマタカシ(日本)等
シンポジウム:美術評論家の椹木野衣氏、現代美術家の宇川直宏氏、実行委員会メンバーや多くの市民等が参加
アートツアー:多くの島内外の人々や東京学芸大等の大学との連携により、大学生等様々な人々が参加。期間中は、約5,000人の参加者、来場者で盛り上がった。

他機関との連携

佐渡市、アースセレブレーション実行委員会、一般社団法人 佐渡観光交流機構、新潟交通佐渡 株式会社(バス会社)、宿泊業者、両津商工会、多摩美術大学芸術人類学研究所等

活動の効果

作家や地域住民との協働による制作、地域住民とのトークセッション、シンポジウム等で交流人口の拡大が図られたとともに、佐渡島全体の文化力向上の効果があった。自然、民俗の伝承、伝統芸能、生活芸術等を、現代芸術の表現を通じて、次代へ継承する足掛かりとなった他、次年度のプロジェクトへ繋がる活動となった。

活動の独自性

行政主導の芸術祭が多くある中、市民発動の芸術祭。規模はまだ大きくはないが、佐渡島の自然・歴史・伝承・風土は独特なものがあり、島と作家、作家と島民のマッチングを重視し、土地や地域に根ざした作品テーマ、制作展示とリサーチで歴史につらなる佐渡島や世界の今を反映し、世界や未来に繋ぐことを企図し、アートの手法により普遍的な価値・創造を試みる。

総括

佐渡島をアートの視点でリサーチした蓄積をもとに、本年度、はじめて開催したアートツアー「もう一つの佐渡観光」には、公募応募を予定している作家をはじめ、島内外から様々な人々が参加し、佐渡における民俗学や芸術人類学、芸術祭について研究と交流を深め、好評を得た。
また、作品制作やアートツアーの開発を通して、地域の人々との結びつきがさらに強まり、活力を得た。本年度から東京学芸大学、東海大学、立教大学等との大学連携による活動・プロジェクトを開始し、地域との繋がりをさらに深め芸術祭に関心を持ってもらえた。他機関との連携もさらに強く結びつき、2021年の本祭開催に向けて足がかりとなる事業となった。
参加作家のひとりである、テリー・ライリー(米国)のドキュメントムービーを制作し、そのインタビューの内容は「さどの島銀河芸術祭」の指針となる内容となった。今年度のプロジェクトの取り組みによって生み出された新たな流れを、継続していくことは勿論、拡張していくことが重要だ。

  • アート・ツアー「もう一つの佐渡観光」の様子

  • イーサン・エステスによる新作展示「Enso / Lifecycle」

  • シンポジウムの様子