アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川

特定非営利活動法人 クロスメディアしまだ

実施期間
2019年4月1日~2020年3月31日

活動の目的

大井川鐵道の走る島田市及び川根本町において、無人駅エリアは過疎エリアである。無人と呼ばれるエリアにおけるアートを手法とした地域再生の取り組みであり、集落に息づく「記憶」「風景」「営み」を掘り起こし表現することで様々な交流や関係を生み出すことを目的とした。

活動の内容

2020年1月より、アーティストがヌクリハウスに滞在しながらの作品制作がはじまった。
集落の人々の滞在中のおもてなしを受けながら開幕に向けた作品制作やプロジェクトが進んでいった。制作は、集落の人やサポーターも多数協力した。新型コロナウイルス感染拡大を受け、関連イベントは全て中止となったが、作品発表は予定通り行うことができた。規制ある状況下ではあったが、集落の人々、サポーター、アーティストの交流が密に行われながら全国から多くの来場者が訪れた。

参加作家、参加人数

<参加作家>
関口恒男/江頭誠/さとうりさ/木村健世/北川貴好/栗原亜也子/ヒデミニシダ/夏池篤/中村昌司/形狩り衆/クロダユキ/カトウマキ/常葉大学造形学部

他機関との連携

島田市及び川根本町の社会教育課(文化担当)及び観光課、静岡県文化政策課をはじめ、大井川鐵道㈱、該当エリアの自治会、また市内企業や一般社団法人等多くの機関の協力や関わりの中で開催することができた。

活動の効果

無人駅エリアの「ヒト・モノ・コト」の魅力を、アートを手法に顕在化させることができた。例えば、ヒデミニシダの「境界のあそび場・浮かぶ縁側」は、当たり前の茶畑の風景がアート作品となり連日多くの人が訪れた。栗原亜也子の「かみさまたちのまちじかん」も、「神の瀬」「佐澤薬師堂」という場がひらかれていくきっかけとなるなど、アートが地域のヒトやモノと組み合わさることで、これまで観光資源とは認識されてこなかった場所の力が新たに発信されていった。

活動の独自性

2つの市町をまたぐ鉄道に沿い「無人駅」をキーワードに開催をしている。
「無人駅」を現代社会の象徴と捉え、情報化、効率化により無人化が進む現代の中、関係性やつながりの希薄さと共に人が減っていくという日本共通課題を浮き彫りにする。しかし、そのエリアでは今も人のつながりを大切に、豊かにいきいきと暮らす人々の姿があり、それらをアートを手法として発信することで、新たな気づきと発見、関係性を作る地域再生の取り組みである。

総括

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、関連イベントは全て中止という判断をしながら、作品発表は予定通りという形で運営を行ったが、大きな事故などもなく無事に閉幕することができた。予想以上に全国各地からの来場者があった。作品表現に関しては3回目の参加であるさとうりさの「地蔵まえ3/サトゴシガン」は会期前に作品を「サトゴ(里子)」に出すプロジェクトが先行して始まり、藤枝市~川根本町まで8組の家庭に滞在したり、2回目の参加となる江頭誠の「間にあるもの」は、江頭氏が「この芸術祭の一番の魅力は集落の人だ」という思いから、(集落の)人が作品になる、という自身初の試みとなったりなど、表現の中に「人」が多く関わったことが今回の大きな特徴となった。
集落の人々も自主的に作品の近くで緑茶のサービスを始めるなど、芸術祭に自分から関わりはじめる様子が見られた。
「ほりおこす」「あらわす」「ともにひらく」の3つのフェーズに沿って運営を行っているが、地域を「ほりおこす」ための素材としての歴史・時には負の歴史など、アーティストへの素材提供として運営側が掘りきれていない部分もあると感じる。無人駅エリアに向けてアートを通じて「問題提起」していけるよう、次回開催に向けて準備していきたい。

  • さとうりさ/地蔵まえ3・サトゴシガン(抜里駅)

  • 関口恒男/福用レインボーハット(福用駅エリア)

  • 江頭誠/間にあるもの(抜里駅エリア)