活動レポート
2019年11月27日アート助成
Vol.04 飛生(とびう)芸術祭2019「僕らは同じ夢を見る―」(飛生アートコミュニティー)の活動紹介
■飛生アートコミュニティーについて⽊造校舎と周囲の森を展覧会場として多様な表現をお披露⽬し、たくさんの⽅と出会い交流する芸術祭を開催しています。2018年は、北海道を襲った台風と北海道胆振(いぶり)東部地震の影響により開催中止となりましたが、2019年は倒木や作品破損という状況を乗り越え、もう一度「僕らは同じ夢を見る」ために芸術祭を開催します。
Website: https://tobiu.com/
■アートとは何か、地域とは何か、人の暮らしとは何か
札幌市から車で一時間ほどの苫小牧と登別の間、海沿いに広がる白老町。少し内陸に進むと北海道らしい広々とした牧場や森が広がります。この町に、赤い屋根の旧木造校舎を拠点として約33年前から活動を続ける飛生アートコミュニティーがあります。
飛生芸術祭として、校舎を囲むようにある森をめぐる形で作品が配置されている展覧会や、1泊2日で森の中でキャンプをしながらパフォーマンスや音楽、美術作品を味わうTOBIUCAMPを開催しています。子どもの来場者が多い芸術祭と評される通り、札幌などから訪れた親子連れが、森の中で遊ぶように作品鑑賞する光景が印象的です。森で行われる活動に加え、「まち」と「ひと」をアートの視点から見つめる創作活動として、白老駅周辺の様々な会場でも2018年からプログラムを実施しています。
今年は、主にパフォーマンスプログラムで構成された「まちと、ひとと、アート。」というプログラムの一つ、Organ Worksによる「町の屋根」の公演が、旧農協倉庫を改装した「しらおい創造空間 蔵」(多目的貸施設)を会場に行われました。白老町と登別市に住んでいる様々な年代の方、約30名へのインタビューをもとに構成されたコンテンポラリーダンスです。ダンスの合間に差し込まれる詩的なセリフが、「最小限のコミュニティ」であり、「居場所の原点でもある、家族、家」というテーマを浮き立たせます。住民それぞれにルーツがあり、ルーツが束になって町があると再認識できた、と実際に創作に参加された出演者のお話が印象的でした。
「町の屋根」の公演の様子
■事業継続の要因 -続いているのは人との絆
白老町には長期間続いている飛生アートコミュニティーの活動があり、地元の飛生アートコミュニティーの認知度が高い印象でした。
さらに、飛生芸術祭やTOBIUCAMPに加えて、校舎裏の森づくり(森林整備)を行うことで、近隣住民を含めて裾野の広いファンが集まってきたと思われます。森づくりは単なる作業ではなく、森の神話を作る“表現”にしたいという思いが、きつい作業を参加者との協働制作へと変えているようでした。年間を通した森づくりの発表会のような位置づけで、芸術祭があることで参加者は当事者に代わり、ゲストを迎える格好になっているように感じました。地元の協賛社数(今年は109社)を指標にすることや、オープニングイベントとして行われているTOBIUCAMPは、参加して楽しいものにするために許容範囲を超えて集客しないと決めていることなど、継続性を担保する材料がいろいろとありました。
校舎裏の森の様子
■今後の展望
森に囲まれた木造の旧小学校校舎から始まり、主会場周辺の森づくりで仲間を増やしてきた芸術祭が、町(商店街)へと会場を広げて2年目の活動となります。森と町の還流を生み出そうとするこの動きが、どのような実を結んでいくか楽しみにしたいと思います。