アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

【自主・共催助成】「瀬戸内全誌」勉強会

「瀬戸内全誌」準備委員会

実施期間
2015年4月~2016年3月

活動の目的

本準備委員会は瀬戸内海の文化を掘り起こすため、さまざまな分野の専門家との知のネットワーク作りを目的としている。それにより「海の復権」をテーマとする瀬戸内国際芸術祭の活動のバックボーンとなる「瀬戸内全誌」(仮題)の編纂に向けての準備を行う。

活動の内容

瀬戸内国際芸術祭総合ディレクターである北川フラム氏は次のように記述している。
「瀬戸内海は、日本の民族・文化のコブクロであり、歴史と自然によって育まれた美しい海である。古来より交通の大動脈として重要な役割を果たし、行き交う船は島々に立ち寄り、常に新しい文化や様式を伝えてきた。一方で、瀬戸内海は、近代以降、公害や環境・景観の破壊、集落の過疎化や超・少子高齢化といった困難な問題に対峙している。(中略)この日本の至宝とも言うべき瀬戸内海の自然、風景、暮らし、食、住(建築)、信仰、風俗、祭り、芸能、歌謡、方言、地名、産業、交通等をまとめた<瀬戸内曼荼羅>を編纂する」
2015年3月29日(土)、北川フラム氏に「瀬戸内全誌」(仮題)の構想を語っていただき、2015年度は3回勉強会を開催した。

参加作家、参加人数

第1回 2015年4月28日(土)
①「日本列島の成立、瀬戸内火山帯の特異性」講師:神戸大学大学院理学研究科教授 巽 好幸
②「大地の成り立ちから地域の強みと弱みを考える―讃岐ジオパーク構想」講師:香川大学工学部教授 長谷川修一
瀬戸内海の魚がなぜ美味しいのか、地形が食にもたらす影響から始まり瀬戸内海の成立についてをマグマ学が専門の巽先生に、瀬戸内海の地質の特徴についてを長谷川先生に解説していただいた。
第2回 2015年9月27日(土)
「人類がたどってきた道」講師:東京国立科学博物館 海部陽介
アフリカに起源を持ち、地球を大移動しながら進化した人類は各地の環境に適応することで多様な文化を持つに至ったが、生物学的には同じ種であること、約3万年前に黒潮を越えて台湾から人類が日本列島にやってきた可能性があること等を解説いただいた。
第3回 2016年3月12日(土)
「海の復権―古代地中海世界の海上交通」講師:文化庁長官 東京大学名誉教授 青柳正規
生命の少ない地中海と多くの河川が流れ込む豊かな瀬戸内海を比較し、海運により繁栄したローマ帝国について解説いただいた。また、文化庁長官の立場から文明の行く末と芸術祭の意義について提言いただき、関係者への励ましとなった。
第1、2回は40~50名が参加した。第3回は一般公開し、香川県民を中心に約70名が参加した。

他機関との連携

本準備委員会は、香川県政策部文化芸術局文化振興課、香川大学、福武財団のメンバーで構成され、協力して運営にあたっている。

活動の効果

多彩な専門家とのネットワークを得られた。

活動の独自性

細分化された学問分野やいわゆる郷土史研究を超え、幅広い視点から瀬戸内海を考察している。

総括

今までの活動を記録に残し、2016年度は芸術祭のさまざまなイベントとも連携しながら、「瀬戸内海」を多角的に考察し、芸術祭のよりどころとなる知見を集めていきたい。

  • 第1回勉強会

  • 第2回勉強会

  • 第3回勉強会