活動レポート

2019年12月4日瀬戸内助成

Vol.06 芸予諸島に残存する古民家を住み継ぐための持続的・実践的活動の紹介

■芸予諸島に残存する古民家を住み継ぐための持続的・実践的活動について
(日髙仁/関東学院大学+西澤高男/東北芸術工科大学)
大三島(愛媛県今治市)は過疎化が進み、空き家が増加し、他の島嶼部と同様大きな問題となっています。この10年大三島や芸予諸島で活動する「芸予諸島に残存する古民家を住み継ぐための持続的・実践的活動」の日髙仁さん、西澤高男さんは、地元NPO団体と協働で築100年を超える古民家を活用イメージが沸く状態にまで整備し、古民家が住み継がれていくための活動を行っています。
9月の中間報告会の2日目に、地域の活動視察として、お二人が今年度整備した拠点を視察させていただき、今までの長年の活動の実績についてお話を伺いました。

■空想をして、地域の人と共有することからはじめる
お二人は初め、しまなみ海道10周年の節目に地域を活性化する企画コンペに提案した「しまなみ海上列車」が最優秀賞を獲得したことがきっかけで芸予諸島に関わることになりました。近年取り組んだ「上島町ゆげ海の駅舎」では、地域住民との調査・ワークショップを通して、海からの視点で陸上の空き家の活用ができないか?と考え、海の駅桟橋の正面にあった旧消防署跡に海の駅を設置し、海上桟橋利用の受付をはじめ、ヨットや自転車での来島者と町民との交流の場を提案しました。ワークショップなどを通じて地元の要望が高まり、施設の実現に向けて動き、設計に携わりました。
「まずは空想をして、地域の人と共有し、“あったらいいな”という発想から提案している」と、日髙さん。「上島町ゆげ海の駅舎」では、その後 “映画館が欲しい”という要望に応え1日だけの映画祭を実施したり、昨年は海の駅舎で勉強する地元の高校生の要望に応えて、カーテンを海の駅舎に作るワークショップを実施したりするなど、持続的に住民と来訪者相互の交流を促し、交流人口増加につなげる活動を行っています。
また、お二人は、芸予諸島をはじめ瀬戸内地域に多く残存する古民家・空き家を、地元のNPO団体と協力し、活用イメージが沸く状態にまで掃除をして整備し、近隣の方にお声がけしてオープンハウスやツアーを開催し、広く魅力を発信する活動も行っています。

■海からの視点で考える
古民家を整備する活動の一環として、今年度整備した愛媛県今治市大三島宗方港前にあるかわかみ旅館(閉業)の事例を視察させていただきました。かわかみ旅館前の宗方港は、かつては今治から多くの船が来航していましたが、架橋に伴う交通体系の変化により現在は便数が減少し、かつての賑わいはなくなっています。そこで、お二人は旅館の目の前にある桟橋を活用して、海のカフェを作り、そこをきっかけに賑わいを生み出し、場所のポテンシャルを引き出すことを構想しました。今年度は学生の有志を集い、実際に桟橋を一部修理してテーブルや日除けを設置し、海上桟橋カフェを具現化するワークショップを実施しました。
かつて賑わっていた港に目を向け、海からの視点で地域の魅力を掘り起こし、地域活性化の可能性について考えるアプローチは学ぶところが多くありました。


海上桟橋カフェを視察



海上桟橋カフェの様子



海上桟橋の目の前にあるかわかみ旅館