アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川

特定非営利活動法人クロスメディアしまだ

実施期間
2023年2月23日~3月19日

活動の目的

無人と呼ばれる場所を現代社会の象徴と捉え、アートを手法に行う地域再生の取組で3つの無人をテーマとする。1つめは「地方の無人化」。当該エリアも過疎の進行とともに無人化へ進んでいる。大地を耕し、森を守り、大井川の恵みによって生きる生活様式が成り立たない社会が目前にある。2つめは「都市の無人化」。地方では街中に、全国では大都市に人口が集中し、巨大な情報化により様々な場所が加速度的に無人化している。3つめは「コロナによる無人化」。世界中の至る場所が無人化した。改めて現代社会が忘れている豊かさの意味や人間の底力を「無人と呼ばれる場所」からアートを道しるべに発信することを目的とする。

活動の内容

当芸術祭は「無人駅がひらくと地域がひらく」をキーコンセプトに地域再生の取組として開催している。地域住民が芸術祭に関わることで地域への誇りの醸成、地域との関わりによる作家の成長を目的とする。テーマを「地方の無人化」「都市の無人化」「コロナによる無人化」の3つの無人とし、芸術祭として3つの無人に挑戦することで地域自身の持つアイデンティティに光を当て、新たな形で掲げる希望の道しるべとなることを目指す。
作家による作品制作を住民との関わりの中で実施し芸術祭にて発表。集落の人々の日々の生活の中にある五感をアーティスト達の表現によってアート作品に変容、昇華させていくような多彩な表現が可能となるアーティスト構成とした。
また、同時連動企画として住民が地域の文化・芸術活動へ主体的に参加していく枠組みであり住民を参加者から主催者へ変容させていくための市民文化祭という位置づけの「アートプラット/大井川」を開催しアートによる地域づくりに邁進する。

参加作家、参加人数

参加作家/上野雄次、内田慎之介、形狩りの衆、木村健世、さとうりさ、関口恒男、TAKAGIKAORU、ヒデミニシダ、ふじたともこ、丸山純子、森繁哉、歪んだ椅子、力五山 計13組・21作品。
アートプラット/大井川
41プログラムの実施(公式7、市民企画34)

他機関との連携

アーツカウンシルしずおか、島田市をはじめ、大井川鉄道(株)は駅舎等での作品設置。女子美術大学ヒーリング表現領域研究ゼミでは単位取得講座として作品プラン創出及び制作発表を行った。また島田市及び川根本町内の30を超える団体及び企業と連携して開催した。

活動の効果

昨年の台風15号により、鉄道が不通、国道も通行止めというアクセスの悪さを、JR島田駅周辺の「まちなかエリア」を新たに設置し週末ごとにツアーを行う形で対応した。全国各地より来場者があり、約3万人の来場があった。韓国、台湾といったアジアからの来場者も少しずつ増加している。
地域内での関わりしろも年々濃密になっており、毎週遠方から参加するコアサポーターの出現と、そういう人材との地域の会期を超えた関わりが生まれている。(詳細は別紙開催報告書参照)

活動の独自性

芸術祭の開催の目的を、「アートを手法に地域を耕し、地域の人が輝く地域づくり」とし、これまでひらいておらず、行政視点からも「お荷物的」とも言える「地域の内側」にスポットを当てる、としている。このことが、開催を重ねるごとに来訪者にも認知され、アート作品とともに、地域の人に会い、交流することを喜びとして価値あるものとする来場者が増えている。地域の70代の人達を「妖精たち」と呼び、交流できるとうれしい。という動きになりはじめていることは当取組の独自性ではないかと考える。
誰も登ることのなかった山がアート回廊として作品が点在するルートが整備されていったり、耕作放棄されていた茶畑がアーティストによりキャンパスに生まれ変わるなど、会期を超えたアーティストとの協働の取組が多数生まれはじめている。

総括

6回展となる今回は13組の作家により合計21作品を制作展示し、各イベントプログラム等を開催した。会期中は全国各地に加え台湾や韓国といったアジア各国からも多くの来場者があった。
今回は新たな取組として、JR島田駅周辺を「まちなかエリア」と設定し中心市街地と中山間地域を連結させるプロジェクトや、抜里エリアに「アート回廊」を整備した。
芸術祭主要エリアである抜里エリアでは通年で「アート回廊プロジェクト」を立ち上げ、ハイキングルートの整備と作品設置を行った。「アート回廊」により、住民しか知らなかった絶景がひらいた。作品は会期後も地域と共に管理していく。 
今回も多くのサポーターや住民に協力をいただいた。特に抜里エコポリス及び抜里町内会の多大な協力は、欠くことのできない芸術祭を動かす重要なエンジンとなっている。作品の根幹となる土台や基礎作り、下準備を制作チームとして進める姿や、会期を通じた作家や来訪者との関わりには感動をおぼえる。このような様々な交流や変化が、地域自体の受け皿が大きくなっていく化学反応とも言える。無人駅では芸術祭の会期を越えて、アートが少しずつ地域の日常に染み出している。日々の中に小さくとも光を見出して笑顔が増えるような地域づくりを今後もアート、芸術祭を軸に行っていきたい。

  • メインビジュアル さとうりさ/くぐりこぶち

  • 寺山(通称ぼいんぼいん山)山頂 ヒデミニシダ/境界の遊び場Ⅳ音の要

  • 森繁哉/一か所の芸術ひとりひとりの芸術